夢への道は恋の花道?
ミチルが躊躇しているので、ミナトがさっさとミチルのフリをしてmirumiru出版社のテラスティン王国イベント係に申し込みの電話をした。


「どうしてあんたが20才じゃないのかって思うわ。
そこまで素早い対応に完璧までの自己紹介・・・。
それも偽の私になりきってなんて!」


「姉思いのいい妹を持ってよかったね。
そうそう明日、面接に担当者が来るらしいからよろしくね。」


「あ、そう。明日ね・・・って・・・
ええええ!!!あしたぁーーーーーー!ちょっとぉーーー!」


ミチルはその日、頭を押さえながら布団をかぶった。

小さい頃から両親は仕事と家庭をこじんまりながらコツコツがんばって、自分と妹を育ててくれていて、それを尊敬し、ずっとあたりまえに続くと思っていた。

なのに、あまりにあっけなく、その日常は崩れ去ろうとしている。
明日、もし面接に合格したとしたら、自分はこの慣れ親しんだ家から出て行くことになる。
何らかの間違いで王子のお妃にもなろうものなら、一生の別れとなるわけだ。

そして、もし明日面接が不合格だとしたら、工場はつぶれ、家族は路頭に迷う。
大学で助手なんてのんきなことを言ってはいられない。

きっと支払いも多いから、水商売や風俗で働くことになってしまうかもしれない・・・。


「そんなの・・・嫌だ。

私はまだどうなっても稼げるけど、妹はどうなるの?
高校途中で身売りなんて・・・!

そんな不幸な目に遭わせたくない。
ふだんはあんなに口達者でも、恋愛を夢見る女の子なんだもん。

汚い世界なんてはいっちゃだめ。」


あれこれ考えて30分もしない間にミチルは眠りについた。(ぇ



翌朝、9時になるとともに玄関のチャイムが鳴った。


「ファッションとイベントでおなじみmirumiruの企画にご応募いただいてありがとうございました。

私、企画部長の中野といいます。

そして、こちらがテラスティン王国イディアム王子側近にして、執事部長ならびに本日の面接執行官の柏木響(かしわぎ きょう)さんです。」


「お初にお目にかかります。柏木と申します。
このたびは王子のお妃候補に応募いただいてありがとうございます。

早速ではございますが、すぐに面接に入らせていただきますので、私どもの用意いたしましたリムジンの方へご足労いただきますでしょうか。」


「り、りむじん!?」


ミチルは慌てて外に飛び出すと家の前の道幅いっぱいにリムジンが止まっていた。
しかも、後ろに車が3台ほどきて、にらみながらクラクションを鳴らしている状況だった。


「あ、申し訳ございません、すぐに走りだしますから・・・。」


柏木と名乗った男は口調も馬鹿丁寧に後続の車の運転者たちに小切手を切って渡していた。
おかげで大したトラブルもなく、リムジンごとミチルは走る社内で気がつくと運転手以外は柏木と2人っきりになってしまった。


「あの。ほんとにこれで面接を?

も、もしかして・・・こういうのってどっきりだったりしない?
それとも、ここであなたにインタビューされながら襲われて、はずかしい写真撮られて、卑猥なビデオに出るはめになるの?」
< 2 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop