夢への道は恋の花道?
テニスの練習後、ミチルは夕飯まで作法講習を受けていた。
講習が終わって、ギリアム邸の食堂へと向かう途中、メイドたちの話にびっくりした。
(千代さんと柏木さんがテニスしてるってどういうこと?)
メイドたちがもうひとりの日本人お妃候補の千代さんが一番目立つテニスコートで大きな大会さながらの打ち合いをしていると噂になっていたのだった。
ミチルは帰り道にこっそりテニスコートをのぞいてみると、少し打ち合った後すでに千代と柏木が握手をしていた。
「とてもいい練習ができましたわ。ありがとうございました。
なんでしたら、明日からでもコーチはお願いできませんの?
そちらの候補さんは初心者でしたわよね。
でしたら、うちのコーチの方が向いていると思いますわ。
子どもの教室で教えていた経験が長い方ですのよ。」
「申し訳ございません。私は使用人管理の仕事や王室からの連絡も請け負っておりますので、テニスの練習はいわば特別任務なのです。
ですので、千代様の専属コーチの時間はとることができないのです。
本日は私の不注意で失礼いたしました。」
「いえ、残念です。お仕事がんばってくださいね。」
(この練習って私のあの1球のせいなんだわ・・・。
自分で謝罪したらややこしいからって、こんな取引していたなんて。)
ミチルは柏木とイディアム王子のところへ夕飯後に向かうことになっていたが、さっさと夕飯を済ませて、ひとりでイディアム王子のところへと出かけた。
「やあ、今夜も元気かい?・・・って顔をしてないねぇ。
キョウがついてきていないところを見ると、何か僕に話があって来たってことかな?」
「あ、はい。じつは・・・そうなんですけど。
あの、私のような初心者を相手にしていただけるテニスのコーチをご紹介いただきたいのです。」
「はぁ・・・キョウが教えるってことになってたんじゃ?
何かあった?」
「私がきちんと返球できなくて、それが隣のコートの千代様に飛んで行ってしまって怪我をさせてしまうところだったんです。
謝罪したんですけど、私に内緒で柏木さんは千代様の練習につきあっておられました。」
「なるほど。千代さんは物静かだけど、ご自分の思いははっきりと言われる方だからねぇ。
おそらく、キョウに練習相手になってくれたら許すと言ったんだろうね。
で、それがミチルには堪えられないわけだ。
キョウは私のもの~~なのかな?」
「いえ、私に説明してくれていれば、私と千代様とは実力が違いますし、私が悪いことをしたのですから納得がいったと思うんです。
でも、隠し事された上に何でもないってフリをされるのはこの先困ります。
私はきっといろんなことを失敗するし、それでなくても柏木さんはすごく優秀すぎてときどき説明されてもわからないし・・・。
このままでは、自分がどんどんバカだって明らかになるばかりで、あまりにみじめです。」
「君にはそういうふうにしか理解できないわけだね。」
「す、すみません。柏木さんみたいに優秀な執事さんをつけていただいて文句を言うだなんて許されないことだってわかっています。
私が劣っているから優秀な方をつけていただいたんだとしたら、ほんとに申し訳ありません。
あの・・・やっぱり我がままですか。
だったら私は・・・明日ここから出ていきます。
その方がきっと。」
「僕はまだな~んにも言ってないんだけど・・・。
ちょっと着替えて、これから付き合ってくれるかな?」
「ええ!?」
講習が終わって、ギリアム邸の食堂へと向かう途中、メイドたちの話にびっくりした。
(千代さんと柏木さんがテニスしてるってどういうこと?)
メイドたちがもうひとりの日本人お妃候補の千代さんが一番目立つテニスコートで大きな大会さながらの打ち合いをしていると噂になっていたのだった。
ミチルは帰り道にこっそりテニスコートをのぞいてみると、少し打ち合った後すでに千代と柏木が握手をしていた。
「とてもいい練習ができましたわ。ありがとうございました。
なんでしたら、明日からでもコーチはお願いできませんの?
そちらの候補さんは初心者でしたわよね。
でしたら、うちのコーチの方が向いていると思いますわ。
子どもの教室で教えていた経験が長い方ですのよ。」
「申し訳ございません。私は使用人管理の仕事や王室からの連絡も請け負っておりますので、テニスの練習はいわば特別任務なのです。
ですので、千代様の専属コーチの時間はとることができないのです。
本日は私の不注意で失礼いたしました。」
「いえ、残念です。お仕事がんばってくださいね。」
(この練習って私のあの1球のせいなんだわ・・・。
自分で謝罪したらややこしいからって、こんな取引していたなんて。)
ミチルは柏木とイディアム王子のところへ夕飯後に向かうことになっていたが、さっさと夕飯を済ませて、ひとりでイディアム王子のところへと出かけた。
「やあ、今夜も元気かい?・・・って顔をしてないねぇ。
キョウがついてきていないところを見ると、何か僕に話があって来たってことかな?」
「あ、はい。じつは・・・そうなんですけど。
あの、私のような初心者を相手にしていただけるテニスのコーチをご紹介いただきたいのです。」
「はぁ・・・キョウが教えるってことになってたんじゃ?
何かあった?」
「私がきちんと返球できなくて、それが隣のコートの千代様に飛んで行ってしまって怪我をさせてしまうところだったんです。
謝罪したんですけど、私に内緒で柏木さんは千代様の練習につきあっておられました。」
「なるほど。千代さんは物静かだけど、ご自分の思いははっきりと言われる方だからねぇ。
おそらく、キョウに練習相手になってくれたら許すと言ったんだろうね。
で、それがミチルには堪えられないわけだ。
キョウは私のもの~~なのかな?」
「いえ、私に説明してくれていれば、私と千代様とは実力が違いますし、私が悪いことをしたのですから納得がいったと思うんです。
でも、隠し事された上に何でもないってフリをされるのはこの先困ります。
私はきっといろんなことを失敗するし、それでなくても柏木さんはすごく優秀すぎてときどき説明されてもわからないし・・・。
このままでは、自分がどんどんバカだって明らかになるばかりで、あまりにみじめです。」
「君にはそういうふうにしか理解できないわけだね。」
「す、すみません。柏木さんみたいに優秀な執事さんをつけていただいて文句を言うだなんて許されないことだってわかっています。
私が劣っているから優秀な方をつけていただいたんだとしたら、ほんとに申し訳ありません。
あの・・・やっぱり我がままですか。
だったら私は・・・明日ここから出ていきます。
その方がきっと。」
「僕はまだな~んにも言ってないんだけど・・・。
ちょっと着替えて、これから付き合ってくれるかな?」
「ええ!?」