夢への道は恋の花道?
柏木はミチルにイディアム王子の状況を説明して、ミチルとナフィリサとの接触を頼みたいという願いを伝えた。
「そんなに大変なことになっていたのね。
でも、ナフィリサ様はそんなおつらい体なのに、お妃候補としてお披露目の場にもきちんと立っておられたわ。
きっとしっかりしたお覚悟があると思う。
今頃、私に何ができるんだろう・・・。」
「お会いする手はずはもう調えてあります。
あなたはそこで悩むよりも行動するタイプでしょう?」
「そ、そうだけど・・・。
当たって・・・砕けちゃいけないんだよ。
私のような庶民が、上流な方に偉そうなことなんて言えるわけもないし・・・かといってメイドみたいになってもいけないんでしょう?
お妃候補だってことはわかっているんでしょうから、メイドゴッコから入るわけにもいかないし・・・。
う~~~~ん・・・。はぁ・・・くぅ・・・。
私のような乙女な頭では、『もう、誰か私をさらってくれて・・・夢の世界に連れて行ってくれたなら~~~私は何も望まない~~~』なんてシナリオしか出てこないわ。
って・・・・・・!それだわ。」
「何かいい案はあったんですか?ナフィリサ様が喜ばれることが?」
「うん。イディアム王子にも参加してもらわなきゃいけないから、そっちはキョウが何とかして。」
「はい、おまかせを。で・・・話しは変わりますが、ミチル様は実質お妃候補からはもうはずれたのですから、そろそろ私も普通の執事の任からはずれたいと思っているのですが。」
「あ、そう。じゃ、いつでもやめていいわよ。
べつにこのシナリオやるのに執事の人はいらないし。」
「ええぇぇぇーーー!そ、そういう意味じゃなくて、そろそろ柏木響というひとりの男として日高ミチル嬢とお付き合いをですね・・・」
「いらないの、そういうのしんどいし。
それに柏木さんはSだからすぐ命令したり、独占しようとするからめんどくさいもん。」
「なっ・・・!私はいつも紳士にふるまっていますけど。
まだあなたは私から学ぶことが多いはずですし。」
「うん、教育係のあなたからは得ることが多いから勉強させてもらってるわよ。
だけど・・・王子との結婚がないんだったら、恋愛にうつつ抜かしてる場合じゃないの。
私、待機期間が終わったら報酬もらってやらなきゃいけないことが山積みだから。
家族がみんな私の帰りを待ってるから、忙しいの。」
「会社の立て直しなら私が力になります・・・。」
「どうしてそんなことあなたが?
もう、そんなこといいって。
柏木さんにはいっぱいお世話になったけど、ここを出たらいい思い出になるの。」
「どうしてそんなことが言えるのですか?
あなたは私の気持ちをおわかりのはずです。
必死でキスまでで我慢してるのだって、知ってるくせに。」
「だからいい思い出なんだってば。
大丈夫、柏木さんは実物はカッコイイんだから、庶民の私にはもったいないし、たとえあなたが人殺しであっても幸せは来ると思うから。」
「どうして・・・それ?」
「拳銃の使い方とか私が殺されそうになったときの様子なんかでね・・・ちょっと気付いちゃったから、ギリアム王子に聞いちゃった。」
「私が人を殺した経験があるから怖くなったんですか。」
「ううん。柏木さんが理由もなく殺人なんてするわけがないよ。
とってもとってもつらくなることがあったんだと思う。
さすがに、そこまでは重くて聞けなかったんだけど・・・。
でも私を助けてくれたときのあなたは・・・薄れていく意識の中で覚えてるんだけど、赤い目をして泣き叫んでた。
手は正確に行動しているのに、冷静なフリして、叫んでたよね。
ごめんなさい。詮索好きってわかったら私が嫌になったよね。」
「嫌な人だ。そんなことを勝手に調べるなんて。
しかも、わざと私に嫌われようとするなど、10年早いですって。
決めました。私はあなたといっしょにここを出ます。
私生活や経済的にあなたにご迷惑をかけることはいっさいいたしませんので、ご安心を。」
「ど、どうしてそんな!
柏木さんはここで必要でしょ?使用人はどうやって束ねるの?」
「そんな仕事は誰でもできますよ。
ミチル様を守るのは私しかいませんから・・・。」
「あ、のねぇ。日本に帰るのよ。
治安の悪い国とか用心棒と歩かないとやばい異世界へもどるわけじゃないんだからね。
ああ~~~まだ先のことなんだから、まずは任務が先よ、任務!」