夢への道は恋の花道?
イディアムと柏木のとりなしでミチルはナフィリサとお茶を楽しむことになった。
物静かで病のせいか、誰かが支えてあげなければいけない雰囲気がいっぱいする女性。
あまりに自分と対照的だと思ったミチルだったが、話してみるとナフィリサは小さい頃の武勇伝をいろいろと話して、子どものときはかなり活発だったようだ。
イディアムと出会った頃のことも、はずかしそうな素振りでミチルに話し始めた。
「王子様だってことは最初から知っていたので、とにかく粗相をしてはいけないってばかり気をつけていたの。
でもね、気をつけなきゃって思えば思うほど緊張して失敗ばかりなの。」
「うんうん、わかる。王子はイケメンだもの、若い時って美少年だったんでしょう?」
「ええ、絵本の中の王子様そのものだったわ。
そんな人が、私に本を読んでくださるなんて夢のようだったし、いつも後ろを追いかけて走り回って・・・足をすべらせて小川に突っ込んでしまったときには抱きかかえて助けてくださった。」
「ロマンチックな思い出ね。いいなぁ。」
「ミチル様もお妃候補でしょう?
こんなお話をきいて、腹がたたないの?
イディアム王子の話をしてから、ずっと気になっていたの・・・。
あなたは王子がほしくないのかしらって?」
「あ~ぶっちゃけ言うわ。私はね、王子にふられたのよ。」
「ええっ!!!そんなのおかしいわ。
だって、寵愛した人がいたならそこでこの企画は終了だって。
どうして脱落者が先に出るの?おかしいわ。
あなた何か、やらかしたの?」
「ええ、じつはね・・・使用人管理してる執事の柏木に求婚されてしまって・・・。
柏木ったら王子に土下座して泣いて頼んだの。
『ミチル様を私に下さい』って。
柏木は昔王子のSPだったし、大学の先輩でもあったからイディアム王子も仕方なしにねぇ~~~~。
でも待機期間はお役目をしないとカッコつかないでしょ。
それで王子は柏木に条件をつけたの。
他の候補や使用人と接触することは禁じるかわりに私はナフィリサ様のお話相手をするように・・・ってね。」
「まぁ・・・あなたたちったら。」
「あははは、すみませ~ん。私たちやっぱり庶民だから、上流階級の作法がダメダメだってわかっちゃったし、とにかく柏木が夜にしつこくて私を離してくれないから・・・。
あ、ごめんなさい。これってノロケだわね。」
「うふふ、いいわよ。面白い人たちね。
私ね、ここで待機させてもらっている間、ひとりでいる時間が怖いって思うの。
イディアム王子と毎日お話する時間はあるけれど、その他の時間って私にはのんびりすぎるくらい空虚な時間で。
それは私の体が弱いから仕方がないんだけど・・・だけど最近ね、ひとりでいるととても不安になっていたの。
ね、ミチル、明日も来て。
ミスターカシワギともお話してみたいから、いっしょに来て。
今日あなたをエスコートしてこられたあの人でしょう?」
「うん。そうよ・・・おじさんでしょ。」
「そうかしら?私には王子に負けないくらいステキな方に見えたけれど。」
「ええ~あんなのがぁ?氷メガネにおっさんこだわりヘアーだよ。」
「うふふふ、あははは。もう、悪いわ。ミチルったら。
だけど、こんなに笑ったのは久しぶりよ。
ちょっとうらやましいわ。
そんなに好き勝手に言えるほど、カシワギが好きなのね。」
「はぁ・・・いえ、そんな。そんなことは。」
「顔に書いてあるわ。イディアム王子もこれじゃ、脱落させるしかなかったでしょうね。
すごく幸せそうなんだもの。
私まで、幸せな気持ちになるカップルなのね。」
「いや、だから・・・そんな。(このお姫様はかなり天然なのかも。)」