夢への道は恋の花道?
翌朝、ナフィリサの執事から熱も下がって会うことができると連絡を受けたミチルと柏木はすぐにナフィリサのところへ出かけた。
「ナフィリサ!!また来たわよ。」
「いらっしゃい、ミチル。それに・・・」
「はじめまして。キョウ・カシワギです。
私までご招待いただきまして、ありがとうございます。
ここでお客の立場をとってしまうと、お嬢様おふたりにイジラレまくってしまいますので、お茶のお世話係も兼ねさせていただきますね。」
「ありがとうございます。
うわぁーーーミチルの話とはずいぶん違って、ステキな方ですのね。
女性によくモテるのではありませんか?」
「いえ、ふだんはもっと地味ですので、そのようなことはありません。」
「では、今は特別なのですね。
背格好はイディアム様と同じくらいだし、ぜんぜん氷メガネじゃないし。
とてもお似合いでかっこいいと思うわ。
まるでミチルの彼氏を紹介されてるみたい。うふふ。」
「はい、ミチル様は紹介したいって言われましたからね。」
「なっ・・・キョウ!あなたねぇ・・・。」
「まぁまぁ、怒るとこじわが出ますよ。
早速、お茶をどうぞ。」
1時間ほどお茶を楽しんだ後、キョウはその場から姿を消した。
「あら?キョウはどうしたのかしら・・・。」
「キョウは別の仕事に行ったの。
あれでも使用人全体の管理者だから何かと忙しくって。」
「そうなの。お忙しいのに私の我がままに付き合わせてしまったのね。」
「そんなことないない~!
キョウに多忙っていう文字はまずないに等しいから。
周りがすごく大変そうに言ってる仕事でも、すぐに終えてもどってくるから。」
「まぁ、そこまでしてあなたに早く逢いたいのね・・・うらやましいわ。
初めてお近くで彼の様子を見せていただいたけど、ミチルのことばかり目で追っていて、愛されてるってわかってしまったわ。」
「え、そ・・・そんなこと・・・。(もう、キョウったらわざと見てたに違いないわ。)」
ミチルが真っ赤な顔になって困っていると・・・
「それ以上ミチルを冷かしてはいけないな。」
「イディアム王子!!」
「やあ、ナフィリサ。気分はどうかな?」
「ええ、とてもいいわ。今日は、ミチルの彼氏のキョウを紹介してもらったのよ。」
「か、彼氏じゃありませんってば。」
「ナフィリサ、現時点でミチルはまだお妃候補なんだよ。
だから、キョウが彼氏と発言してはいけないんだけど・・・。」
「あ、そうだったわね・・・。私たちはライバルだったわ。うふふ。
でも、どうしてイディアム様が急にここへ?」
「君に逢いたいと思ったんだけど・・・ダメなのかな。
僕のいないときに、僕の話をたくさんミチルにしたそうじゃないか。
思い出だけでは心の底から楽しめないと思うよ。
思い出話をするなら、2人で思い出さないか?」
「きゃぁ~ナフィリサ・・・よかったわね。
この時間をしっかり楽しむのよ。
楽しんだらまた、私に自慢してちょうだいね。」
「えっ、ミチルは居てくれないの?」
「私はほら、あの黒いヤツの仕事を増やしにいかないといけないしぃ。
お互い楽しみましょう。ねっ」
「ありがと、ミチル。また来てちょうだい。
絶対よ。」
「うん、ナフィリサ、がんばって。」
ミチルはイディアム王子にチラと目で合図して、さっさと出ていった。
その後、ミチルが王宮の前の道でうろうろしていると、後ろで声がした。
「うれしいですね。私を待ち伏せしてくれているなんて。」
「ち、違うわよ。キョウがもしかしてドジふんじゃってるんじゃないかって心配で・・・。」
「大丈夫みたいです。ジュイム様はけっこう調子にのってイディアム様になりきっておられましたからね。
今はマーガレット嬢と楽しく過ごしておられます。
ナフィリサ様は王子が来て驚いておられましたか?」
「うん、びっくりしてたよ。
でも、とてもうれしそうで、うっとりしてた。
ほんとに王子のことが好きなんだなぁって・・・だけど、あんなに好きなのにどうしてもっと早くお妃にならなかったのかな。」
「なれなかったんですよ。
王様が反対されていたのです。
イディアム王子が15才のときに母君が亡くなって、それまでナフィリサと仲良くしていたイディアム王子は王様から無理やり王宮に連れ戻されました。
小さい頃から情をかわしていた女がいたら、他国の王家の姫など紹介してもらえなくなってしまいますからね。
外交上、婚姻は国同士の平和につながることなどは、日本の歴史なんかでも習ったでしょう?」
「うん。妻っていう名前の人質の意味もあるんだよね。
だけど、テラスティンの歴史を学んだけど、そういう戦略的な外交はしなくてもいい国のおつきあいしてるじゃないの。」
「そうです。政略結婚などいらないと思いますね。
だから、今になってこんなお妃候補などというイベントっぽい募集をしたのです。
そして、王様はご病気になられて、イディアム王子はそんな父親の過去を恥じた。
ナフィリサを遠ざけることはもうしなくていいってお迎えにいったら・・・。」
「命がもう短かったのね・・・。」
「ええ。悲しい話です。」
「私たちがしてあげられることは、ナフィリサの残り少ない時間をイディアム王子でいっぱいにしてあげるくらいしかないわね・・・。
あ、そういえば3日後はダンスパーティがあったわ。
ナフィリサは王子と踊れるかしら・・・。」
「踊れると思います。ナフィリサ様の思いは本気です。
たとえ、踊っている途中に命がなくなっても王子と踊ってもらわないと。」
「私・・・踊れない・・・。どうしよ。」