夢への道は恋の花道?
ミチルの応募資料を読んで、弟が買収した地域に父親の会社があったことが判明した。
弟の会社とテラスティンのつながりを調べるためだとはいえ、何の罪もない中小企業をひどい目にあわせるわけにはいかない。
そんなきっかけでミチルの執事をかって出た。
お妃選びの企画は国王の願いであり、響が責任者となったのは皆がイベントに注意がいっているうちに貿易の内情をさぐりたかった意味あいもあった。
お妃候補の姉御っぽい性格で響と行動を共にしていたというマウルという女性はアメリカから来たおとり捜査官だった。
諸外国でもテラスティンからの怪しいビジネスと殺人は数は多くないものの起っていた。
メイドとして潜入捜査していた女性と響はSPの養成所からの付き合いがあって数少ない心を通わせた女性だった。
イディアム王子の部屋の掃除中に彼女は殺されてしまった。
王子3人中、下の2人の王子はあまりビジネスには興味がなく、三男ジュイムでも国内の産業のみで小さな店をやりたかったようだった。
ということは、イディアムが外国からの取引を一手に扱う権利を持っている。
メイドが死に、お妃候補も死んだ。
イディアムを訪ねてくる怪しい身なりの男たちの姿。
どう考えてもイディアムの身辺で誰かが糸をひいているのは確かだった。
問題は、日本側の社内である。
双子の弟たちの会社を響が引き受けて経営者となったが、まだ敵は尻尾を出さない状況だった。
しかし、教の経営している機械部品の会社内からあるチップが見つかった。
解析の結果、どうやら麻薬の類の受け渡し記録だとわかった。
チップが見つかったのは、買収した中小企業の中の事務所からで、そこの元社長という人物が失踪したまま行方知れずになっていた。
そして、響の嫌いな泥棒のクランが教の会社から何かを盗み出そうとしてチップを落としてしまったらしいということが後になってわかった。
それらのことが現在わかり得ているが、響が手に入れた会社の中で誰がテラスティンとの橋渡しをして、利益を得ているかがどうしてもつかめない。
「で・・・私と結婚したいっていうのはなぜなの?」
「結婚したいから。」
「いや、そうじゃなくて・・・そこまでたらたらと私に現在までのいきさつを話してくれたんだから、私が響さんの奥さんになって活躍してほしいことがあるってことだよね。」
「べつに活躍なんて期待してない。」
「だって、死ぬかもしれないから結婚するって。」
「ごめん。帰国してちょっと疲れてるっていうか、考えすぎたというか、今自分でもどこをどう調べたらいいか、誰を信用していいのかわけがわからなくなった。
できれば君を危ない目にあわせたくないってずっと思ってきて、突き放したのに・・・それでも俺にかかわろうとがんばってくれたことに感謝したいし、あれ、何言ってるんだろう・・・。」
ミチルが響のおかしな言動に響の顔を両手でさわると、明らかに熱かった。
「ね、熱があるじゃない!早くもどりましょう。」
「だめだ・・・ホテル住まいだし特定の住まいは決めてない。」
「う~~~ん、でも休まないとだめだってば。」
そうやっているうちに響は教会内で倒れてしまい、ミチルは考えた末に、有沢牧師に頼んで、ミチルの実家へと運んでもらうことにした。
途中、病院に寄って治療薬をもらってミチルは自宅へと向かった。
「あら、ミチル!どうしちゃったの・・・その男の人は誰?」
「きゃあ~~~お姉ちゃん、けっこうイケメン連れてきたじゃないの。」
「話はあと!お母ちゃん頭冷やすもの持ってきて。
ミナトはお布団の用意を手伝って。」
「わかった。」