夢への道は恋の花道?
クランは柏木の様子をながめて、翌日に出直してくるといって出ていった。


「社長ってけっこういい人でしょ。」


「な、もしかしてミナト・・・。クランのことを?」


「お姉ちゃんさえよければなんだけど・・・。ダメ?
もちろん、それは危険な香りっていうのもわかってるけど・・・。」


「そばにいたくなるのよね。」


「そうそう。お姉ちゃんも柏木さんのそばに居たいんでしょ?」


「うん。熱にうなされながら私と結婚したいって言ってくれたの。
本心じゃなくて、何か思惑があるのかもしれないけどね。」


「すごいじゃない!そういうときって本気なんじゃないの?
大真面目で本気。弱ってるときって嘘はつけないと思うよ。」



「こら、人生知り尽くしたようなこと言わないの!
女子高生のくせに」


「もう卒業だもん!」




明け方になって、柏木響は目を覚ました。


「ここは・・・?あれ・・・ミチルが。
俺は、教会で2人で歩いて・・・プロポーズの返事を待って。

どうなったんだろうか・・・。」



「ふわぁ・・・柏木さん熱さがった?
シャツを着替えましょう。」



「ここはどこですか?」


「私の実家よ。いきなり高熱で倒れちゃうんだもん。
牧師様に手伝ってもらってここまで連れてきちゃった。」


「なっ・・・そんな君のご両親や妹に迷惑がかかるじゃないか!」


「もうかかっちゃってるんだから、あきらめて。
それと、クランと話して。」



「あの泥棒と何を?」


「キョウさんの会社で見つけたチップの話よ。
クランはコソ泥ではなくて、おじいさんのコレクションを集めていたの。
正確には、クランのお姉さんがおじいさんのところから盗まれたコレクションを取り返していたの。

でも、イディアム王子の配下にお姉さんは撃たれてしまったの。
命は助かったものの・・・意識がまだもどらないんだって。」


「それは・・・植物状態ってことか。」


「うん。イディアム王子は姉弟がコレクションを集めているのを知っているから、今度はクランの弱みにつけこんでいろんな用事を言いつけてきたんですって。

だからテニスのコーチも引き受けたのよ。」



「そうか・・・あいつには似たようなにおいがあると思ったけど・・・」


「俺もあんたと同じように思ったぜ。」



「クラン!おはよう。いいところに来てくれたわ。
さっき目を覚ましたのよ。」



「で、俺に話すことってなんだ?」


「イディアム王子の部屋の階下に地下室があってな。
そこに黒い包装をしている箱がどっさりと積み上げられていたのを見つけた。

たぶんあれは・・・」


「麻薬、もしくはテラスティンハーブだな。
そうか・・・いい情報をありがとう。
君の事情もきかせてもらった。誤解しててすまなかった。

できれば君のお姉さんの口からもききたいことがあるんだが、無理だよな。」


「今のところはね。・・・けど、最近、姉の手が温かくなったり、昨日の夜だけど手の指がかすかに動いたんだ。」


「まぁ!」


「それはよかった。
じゃ、君に頼んでもいいかな。

お姉さんは黒い箱のことやテラスティンハーブがどこに持ち出されていたか知らないか?って。
それと、テラスティンの繊維工業がいきなり低迷してしまった謎だ。

先の王様の時代より前からテラスティンの繊維質のしっかりした植物とハーブは国を代表する名産だった。

なのに、農家があっという間になくなり、主力だった農夫たちがいなくなってしまった。
もしかしたら殺されたのかもしれない・・・。

そのへんのこともききたいのだけど。」



「あんたみたいに目を覚ましたらきいてみるよ。

ああ、それはともかく、俺のミチルと結婚するって本当か?」



「俺のミチル?なんでそうなる・・・?
何かあったのか?まさか・・・おまえは!」


響はクランの襟をつかみあげて怖い表情をしている。


「ち、ちがうから!クランを好きなのは妹のミナトなの。」


「えっ?」


「ええええええーーーーー!ミナトちゃん?」


「クランごめんなさい。私は妹の思い人を横取りするようなことはしたくないし、あなたはほんとはいい人でいい友達でいたいと思ってるわ。

私はここに来る前に、柏木さんにプロポーズされて、もう返事をしちゃったのよ。ほんとにごめんなさいね。」



「み、ミチル?返事って・・・も。申し訳ない!熱で倒れて返事をきいていませんでした。
遅くなりましたが、お聞かせください。お願いします。」


「もう・・・柏木さんったら。ここで言うのは・・・ねぇ。
あ・と・で。ねっ」


「う、うん。」


「あ゛あ゛ーーーーー!なんだおまえら。朝メシ食ったらまた出直してくるから好きにやれよ。

俺、俺さ・・・ミナトちゃんのような娘に触れてもいいのかな。」


「本人がいいって言えばいいんじゃない?」


「おいっ!わ、わかったよ。じゃ。あとでな。」
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