夢への道は恋の花道?
あまりに真剣な顔をしていう響の言葉に、ミチルは返す言葉がなくなっていた。


すごく束縛されてしまう反面、そこまで自分を大切に思ってもらえるのがうれしかった。


「わかったわ。寮の部屋は出ることにします。
そのまえに、あの・・・あなたの家を見せてもらっていい?」



「もちろん。私とミチルの家です。必ず気に入ってもらえます。」


「あいかわらずの自信家ですこと。」



「自信がなければ、ここでこんなことはやっていません。
それと・・・ミチルにはテラスティンの人になってもらいました。

ギリアム王子の計らいです。
ですから、2人して日本人ではありませんからね。
テラスティンの婚姻届にサインをしてもらいます。」


「うわっ、勝手に国籍まで変えられちゃってるのぉ・・・。」



「ご実家へはいつでも行けますから気にしなくていいです。
じゃ、2人でお友達をここで見送ってから、新居へ行きましょう。」


「う、うん・・・。(まさか国籍まで変更されるなんて予想もしてなかったわ。もしかして、もう私の意思なんて何も通らないかも・・・。
嫌よ、私はお姫様じゃないんだから、自由であるはずよ。)」



響はカフェからバスで1つ学校よりの停留所の近くにある庭付きの家をミチルに案内した。


「庭はついているけれど、家はこじんまりで申し訳ない・・・。
店の改築に予算オーバーしてしまって、住まいまでは手がまわらなかった。

会社から一時借りるって方法もあったけど、それをすれば日本で通勤しなければならなかったし。」



「私はここが気に入ったわ。
バカでかい邸なんて私には管理できないし、テラスティンではギリアム王子の邸だから安心感があって使用人もたくさんいて合宿生活のノリだったじゃない?

だけど、私にはメラルーナ様みたいに女主人なんて無理だもん。
現在は女子学生ですから。

あっ、ギリアム様は国王になったのよね。
あらら・・・メラは王妃様よね・・・うわぁぁ・・・やばいわ。」



「お祝いなら私とミチルの名前でしておきました。
いちおう、事後報告になりますけどね。」


「えっ、そ、そうなの。ありがとう・・・。
私、バタバタしてて、とにかく自分でここでやっていくだけでいっぱいだったから、お祝いのことなんてすっかり忘れて・・・。」



「そうでしょうね、私のことも忘れていってしまった。」



「そ、それは。忘れてなんかないけど・・・勝手なことしてるけど・・・。
もういいわ。
柏木さんが忘れてるって怒ってるなら、仕方がないもの。
わざわざご機嫌をとりにいく時間があるなら、勉強したかったんだもの。

でも、今の勉強をじゃまするならここには住まない。
寮を解約されたってホームレスで学校に通うもの。」


「やれやれ、あいかわらず言いだしたらガンコだ。
ミチルが勉強するのを阻止したら、カフェもこの家も意味がないことくらいわかっています。

ただ・・・病院に何も言いにきてくれもせず、手紙も何も連絡がないまま放っていかれて・・・少しくらいすねてしまっても仕方がないじゃないですか。」



「はぁ・・・・・どうして僕を置いて行ってしまったの。みたいな?
プッ!うそっ。
いつもひとりで走り回っていた柏木さんがぁ?
おっさんがひとりですねてたの?やだ・・・信じられなぁ~い。」


「ミチルの実家でしばらく待っていたけれど、実家にも連絡をよこさないし、ミナトちゃんはクランと毎日ベタベタして・・・うらやましいし・・・。
お母さんはやたら気を遣ってくれて、明日は連絡があるよって慰めてくれるし・・・。」


「あらぁ・・・。(言葉できいてしまうと、かなりうちに居辛かったでしょうねぇ。かわいそうに・・・。
だけど、かわいい。)」


「かつての同僚にこっちのことを調べてもらって、そろそろここでミチルに会ってもいいと思ったんです。

もちろん、いっしょに暮らすつもりでね。」



「ねえ、ほんっとに私でいいの?」


「なんでそんな言葉が出てくるんです?」


「だって、柏木さんはすっごい実業家でしょ。
こうやってホイホイって店とかお家を用意しちゃえるんだもの。

さっきいた友達だってそんなことしてくれる男性がいたら、みんな喜んでお嫁さんになるって言うわ。」


「ミチルは卑怯だ。自分でいいのかと選択権を私に押し付けて。
自分からはなかなか、私がききたいことばを言ってくれないですね。

私の気持ちは店の噂とこの家で完全にわかっているくせに・・・。」


「だから、ここに住むって言ってるじゃない!
それじゃ嫌なの?」


「住むだけじゃダメです。
柏木ミチルが同じベッドに寝てくれないとね。
ずーーーっと痛い痛い思いでひとりだったんですから、いっぱい返してもらわないと。」


「う、うわっ・・・。」
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