夢への道は恋の花道?
そう言った、マウグルの表情はあっというまに険しくなって、ミチルの胸ぐらを掴んで声をあげた。
「君は誰に囲われてるんだ?そのスカートを切り裂いたことについて、どんなに咎められるかと思ったのに・・・笑っていられるなんてな。
しかも、ウェディングドレスがほしいといったり、逆にお金がないだと。
僕の正体を教えてやっても、その言いぐさは気に入らないな。」
「ま、待ってよ・・・この服ってそんなに高価なものだったの?
そりゃ、いっしょにドレスも吊ってあったけど、今朝はこれしか着るものが置いてなかったのよ。
寮にもどってればいつもどおりTシャツとジーンズ姿で作業してたわよ。」
教室で騒ぎになりかけたところで、ミチルと寮が同じ友達がかけつけてきてマウグルに説明をした。
「ミチルはまだ入学してそんなに経ってないから、素材のこととかこっちの有名ブランドのことは疎いのよ。
許してやって。たぶん、今着てる服は、ミチルの彼氏からのプレゼントなのよ。
ミチルを追いかけて、昨日再会したばかりでお祝いしたのよね、ねぇミチル。」
「うん・・・。」
「ごめん。聞こえてきた話が気に入らなかったから、近づいただけだったんだ。
こんなにいい服を着ているのに、文句ばかりで、イラッときて。」
「ごめんなさい。あなたはすごく洋服が好きなのね。
それに比べて、私は同じことに携わるのに、恥ずべきこと言ってたんだわ。
何にもわかってなくて・・・。
これからはもっと注意して勉強します。ありがとう。じゃ。」
ミチルはその場にいるのが恥ずかしくて、学校の外へと走って出ていった。
(私はすごく考えが甘かったわ。漠然と好きとかステキなだけの世界じゃないんだ・・・。先祖代々、胸をはって人の思い出になるような服を作る人たち。そんな人に比べたら、私はファッション雑誌を見てよろこんでるだけの女子高生と変わらないじゃない。)
落ち込み気分で、ゆっくりと歩いて寮の入り口の門までさしかかったときだった。
「ミチル!待ってくれ。」
「あれ、マウグル・・・どうして?」
「君の友達からちょっと事情をきいたんだ。
僕に、僕に君のウェディングドレスを作らせてくれないか?」
「でも・・・まだ結婚式の日取りも決めてないの。
入籍の書類は昨日書いて出したんだけど・・・。」
「何年も式をあげないわけじゃないんだろう?」
「そうだと思うけど・・・。」
「じゃあ、作らせて。僕の勉強にもなるし、日程上きびしいと思ったらうちの実家のお針子総動員しても仕上げることも可能だから、大丈夫だし。」
「ただ、私の一存じゃ・・・。決められないし。」
「そ、そうだね。その服をプレゼントした人に頼むのが筋だね。
あ、君の友達からきいたけど、これからその人の家に引っ越しなんだろう?
僕も手伝うから、彼氏さんを紹介して。
で、直接ドレスの製作をお願いしてみるから・・・だめかな?」
「うん、かまわないけど、引っ越しの手伝いなんて・・・申し訳ないわ。
そんなに荷物もないのよ。
かなり、玉の輿なんだと思うし。」
「そうなの、そりゃ、すごいねぇ。
その彼氏さんと会うのが楽しみだ。」
そして、ミチルは響に電話をして、細々した荷物をまとめた。
さほど時間もかからず、学生寮の前にトラックがやってきて、引っ越し業者のスタッフが4人と響がやってきた。
「うわぁ・・・なんか早っ!」
「ミチル、事務所で挨拶をすませてきなさい。」
「うん。いってくる。」
響が外でミチルを待っていると、マウグルが響の前に立った。
「あなたがミチルのご主人だったとはね・・・。」
「君は・・・ラウグの弟の。」
「マウグルです。兄がお世話になりました。
まだ療養中ですが、かなり薬は抜けたみたいで、話もできるようになってきました。」
「そうか、よくなって家業に復帰できるといいね。
私の弟は2人とも亡くなってしまったから、復帰はできないんだ。
君の兄さんには、弟たちの分まで強く生きてほしい。」
「キョウ、いや、響・・・僕は偶然だったんだけど、今日ミチルにウェディングドレスを作らせてほしいとお願いしました。
そしたらミチルがご主人に頼んでみてほしいというので・・・。」
「へぇ。君が受けてくれるなら、うれしいなぁ。
そういうことは、ミチルに好きなようになってもらおうかと思ってたから、助かるよ。
私は、女性のドレスには疎くてね・・・なんかミチルに用意してたワンピースも彼女が勝手に切り刻んでいたみたいだし・・・気に入らなかったのかなぁ。」
「あ・・・それ・・・じつは、すみません、僕が切り裂いたんです。」
「えっ!?」
「ミチルが動きづらくて実習できないっていうんで、動きやすくしてしまって。
切ったあとで高価なものだとわかったので、申し訳ないです。
それもウェディングドレスを作らせてほしいという理由なんです・・・。
ほんと、すみません!」
マウグルは教室での話を響に説明して謝罪すると
「あははは、そういうことだったのか。
気を遣わなくていいよ。君は洋服にこだわる職人だ。当然だよ。
ミチルは案外おおざっぱでしょう?
それが助かることも多いけど、困ることもあるからね。
普通に発注するから、シャーランドの請求書をくれればいい。
こちらからあらためてお願いするよ。よろしく。」
「はい、あとでミチルの採寸させてもらってうちの職人たちと打ち合わせにかからせてもらいますね。」
「君は誰に囲われてるんだ?そのスカートを切り裂いたことについて、どんなに咎められるかと思ったのに・・・笑っていられるなんてな。
しかも、ウェディングドレスがほしいといったり、逆にお金がないだと。
僕の正体を教えてやっても、その言いぐさは気に入らないな。」
「ま、待ってよ・・・この服ってそんなに高価なものだったの?
そりゃ、いっしょにドレスも吊ってあったけど、今朝はこれしか着るものが置いてなかったのよ。
寮にもどってればいつもどおりTシャツとジーンズ姿で作業してたわよ。」
教室で騒ぎになりかけたところで、ミチルと寮が同じ友達がかけつけてきてマウグルに説明をした。
「ミチルはまだ入学してそんなに経ってないから、素材のこととかこっちの有名ブランドのことは疎いのよ。
許してやって。たぶん、今着てる服は、ミチルの彼氏からのプレゼントなのよ。
ミチルを追いかけて、昨日再会したばかりでお祝いしたのよね、ねぇミチル。」
「うん・・・。」
「ごめん。聞こえてきた話が気に入らなかったから、近づいただけだったんだ。
こんなにいい服を着ているのに、文句ばかりで、イラッときて。」
「ごめんなさい。あなたはすごく洋服が好きなのね。
それに比べて、私は同じことに携わるのに、恥ずべきこと言ってたんだわ。
何にもわかってなくて・・・。
これからはもっと注意して勉強します。ありがとう。じゃ。」
ミチルはその場にいるのが恥ずかしくて、学校の外へと走って出ていった。
(私はすごく考えが甘かったわ。漠然と好きとかステキなだけの世界じゃないんだ・・・。先祖代々、胸をはって人の思い出になるような服を作る人たち。そんな人に比べたら、私はファッション雑誌を見てよろこんでるだけの女子高生と変わらないじゃない。)
落ち込み気分で、ゆっくりと歩いて寮の入り口の門までさしかかったときだった。
「ミチル!待ってくれ。」
「あれ、マウグル・・・どうして?」
「君の友達からちょっと事情をきいたんだ。
僕に、僕に君のウェディングドレスを作らせてくれないか?」
「でも・・・まだ結婚式の日取りも決めてないの。
入籍の書類は昨日書いて出したんだけど・・・。」
「何年も式をあげないわけじゃないんだろう?」
「そうだと思うけど・・・。」
「じゃあ、作らせて。僕の勉強にもなるし、日程上きびしいと思ったらうちの実家のお針子総動員しても仕上げることも可能だから、大丈夫だし。」
「ただ、私の一存じゃ・・・。決められないし。」
「そ、そうだね。その服をプレゼントした人に頼むのが筋だね。
あ、君の友達からきいたけど、これからその人の家に引っ越しなんだろう?
僕も手伝うから、彼氏さんを紹介して。
で、直接ドレスの製作をお願いしてみるから・・・だめかな?」
「うん、かまわないけど、引っ越しの手伝いなんて・・・申し訳ないわ。
そんなに荷物もないのよ。
かなり、玉の輿なんだと思うし。」
「そうなの、そりゃ、すごいねぇ。
その彼氏さんと会うのが楽しみだ。」
そして、ミチルは響に電話をして、細々した荷物をまとめた。
さほど時間もかからず、学生寮の前にトラックがやってきて、引っ越し業者のスタッフが4人と響がやってきた。
「うわぁ・・・なんか早っ!」
「ミチル、事務所で挨拶をすませてきなさい。」
「うん。いってくる。」
響が外でミチルを待っていると、マウグルが響の前に立った。
「あなたがミチルのご主人だったとはね・・・。」
「君は・・・ラウグの弟の。」
「マウグルです。兄がお世話になりました。
まだ療養中ですが、かなり薬は抜けたみたいで、話もできるようになってきました。」
「そうか、よくなって家業に復帰できるといいね。
私の弟は2人とも亡くなってしまったから、復帰はできないんだ。
君の兄さんには、弟たちの分まで強く生きてほしい。」
「キョウ、いや、響・・・僕は偶然だったんだけど、今日ミチルにウェディングドレスを作らせてほしいとお願いしました。
そしたらミチルがご主人に頼んでみてほしいというので・・・。」
「へぇ。君が受けてくれるなら、うれしいなぁ。
そういうことは、ミチルに好きなようになってもらおうかと思ってたから、助かるよ。
私は、女性のドレスには疎くてね・・・なんかミチルに用意してたワンピースも彼女が勝手に切り刻んでいたみたいだし・・・気に入らなかったのかなぁ。」
「あ・・・それ・・・じつは、すみません、僕が切り裂いたんです。」
「えっ!?」
「ミチルが動きづらくて実習できないっていうんで、動きやすくしてしまって。
切ったあとで高価なものだとわかったので、申し訳ないです。
それもウェディングドレスを作らせてほしいという理由なんです・・・。
ほんと、すみません!」
マウグルは教室での話を響に説明して謝罪すると
「あははは、そういうことだったのか。
気を遣わなくていいよ。君は洋服にこだわる職人だ。当然だよ。
ミチルは案外おおざっぱでしょう?
それが助かることも多いけど、困ることもあるからね。
普通に発注するから、シャーランドの請求書をくれればいい。
こちらからあらためてお願いするよ。よろしく。」
「はい、あとでミチルの採寸させてもらってうちの職人たちと打ち合わせにかからせてもらいますね。」