夢への道は恋の花道?
様子がおかしいと思ったのはミチルが腹痛だといった翌日からすでに感じていた。

響はミチルが自分に嘘をついていることはわかっていたが、ミチルは嘘をついてもその裏には必ず、響に迷惑になっちゃいけない、響を守りたいという意思がはたらいていることも、今までのことでわかっているから、ミチルを問い詰めたりはしなかったのだが・・・。


「何を苦しんでいるんだ・・・?
私にどうしても言えなくて悩んでいるのはわかっているのに、それを知るすべがない。

学校はきちんと出席しているようだし、学校で問い詰めたら?とも考えたけれど・・・それじゃきっと、ミチルは答えてくれない。はぁ・・・」


そんなふうに溜息をついていたときだった。
クランから電話がかかってきた。


「やあ、新婚さん!仲睦まじくがんばってるか?
うちはみんな元気だ、安心しろ。で・・・ミチルにかわってくれる?」


「それが・・・」



「ぬぁ、なんだってぇーーー!ミチルが出て行ったって浮気したのか?
そ、それとももしかして・・・うちの姉ちゃんのせいか?」


「姉ちゃんのせいってなんだ?」


「あれ、まだそっちに行ってない?
俺の姉貴が元気になってフランスでモデルとして雇ってもらえるようになったから、そっちへお礼がてら挨拶に行くってうちにも来たんだよ。

それでさ、ミナトの父ちゃんと母ちゃんがミチルのとこへ土産を姉貴に託したんだけど・・・。まだついてなかったのか。

けっこう美人だからさ、そっちで夫婦喧嘩なんか起こってたら面白いな~なんて思ったんだけど。あはははあは。」



「変なこと計画するなぁ!・・・はぁ。
クラン、今、おまえがここにいてくれたら、ミチルの本心を調べてほしいと土下座して頼みたいんだけどな。」


「おい、どんだけ凹んでるんだよ。
う~~~ん・・・国内ならあいよ~って見てきてやるけど、遠いからなぁ。」



ピンポ~~~ン!


「おい、クラン、おまえの姉さんが来たぞ。
すぐかわるよ。」



クリス・リリナスという名前でスーパーモデルとして生まれ変わったクランの姉は175㎝という身長に5㎝のヒールに体のラインがしっかりとわかるレザースーツでやってきた。

颯爽と歩く姿はハリウッド女優を思わせるようなセクシーさがある。
しかも、クランの前にクインとして泥棒をしていたくらい体の動きもしなやかだった。

しばらくクランと電話で話して、クリスはニコッと笑顔で返事をしていた。



「お礼が遅くなってすみません。リハビリに時間がかかってしまってね。
クリスです。クランともどもお世話になってありがとう。

弟から事情はききましたわ。
大変なことになってるようですね。」


「お恥ずかしいことなんですがね・・・。
どうすることもできなくて。」


「私なら女どうし。探るのは簡単だと思います。」


「でも、あなたには新しい仕事があるのに、危険が伴うようなことはもう・・・しない方がいい。」


「大丈夫ですわ。ミチルは学校には毎日通っているのでしょ?
凶悪事件にまきこまれてるわけではないんだと思います。

とにかく、事情だけでもさぐってみますよ。
私も、ショーの日とレッスンばかりなんて退屈だと思ってたしねっ。」


「えっ!?」


「命の危険もあったのに、私を助けだしてくれたときのあなたはとてもステキだったわ。
もちろん、今もね。

ミチルがちょっとうらやましい。なんてね・・・。
とにかく、事情だけでもさぐってみます。
落ち込まないで、待ってて。」


「ありがとうございます。くれぐれも気をつけて。」


そして、クリスがミチルが夜にどこにいるかを調べ上げるのに時間はかからなかった。

さっと、マウグルの家の前でミチルを待ち伏せし、ミチルを自分のアパートへとひっぱっていった。
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