夢への道は恋の花道?
ミチルはクリスの顔をじっと見て、きれいを連呼していた。
「あんまり見とれないでよ。
あなただってメイクも勉強すれば、それなりにきれいになるわ。」
「それなり・・・は失礼だと思います。
さすが、クランのお姉さんだわ。」
「ふふふ・・・。ところで、あなた何を脅されてるの?
男の家に住んでいるなんて、普通じゃないでしょ?
あんなにすてきな旦那様をひとり残して、浮気のつもり?」
「ちがうわ!絶対ちがう!
だけど・・・私がバカなことにまきこまれたから、響さんには見せられないの。
嫌われるくらいなら、会えないほうが・・・。」
「誰にもいわないから、私に話してみなさいな。
私ね、あなたたちにお礼をしたいの。
私ならあなたの役にたつと思うんだけど。
話すだけでも、心が楽になるわよ。」
「響さんには言わないでくださいね。
じつは・・・」
ミチルはマウグルとラウグのことでマウグルの言いなりになっていることを話した。
「マウグルの歪んだ愛情ね・・・。
そんな愛なんて、相手を苦しめるだけなのにね。
あなたはその歪んだ愛情をずっと受けるつもりなの?
今のままなら、響とは別れることになるわ。
だったら写真くらい彼が見てもあなたを愛してることは変わらないって思えないの?」
「だって・・・響さんって、丁寧で優しそうにみえてけっこう嫉妬深いんだもん。
怒り狂ってマウグルを殺しちゃうかもしれないし。」
「あはははは。あなたおかしな子ね。
響が好きなんでしょ。なのに敵の肩をもつの?」
「だって、好きになる気持ちは誰にでもあるし・・・マウグルのお兄さんはほんとは療養中なんかじゃなくて、手遅れで死んでしまったんだもの。
響さんを恨む気持ちも・・・なんか複雑で・・・。
響さんと兄弟みたいに話してたのは嘘だったなんてショックで。
写真のことよりも、そっちの方が悲しくなったりして。」
「もう・・・どこまでおめでたいバカ?
わかったわ、私が写真とネガをちょっと取り返してきてあげる。」
「取り返すって・・・」
「もちろん、クランと同じ方法でよ。」
「ど、どろぼ・・・」
「しーーーっ!いいからしばらくの我慢よ。」
「う、うん。気を付けてね。」
しばらくして、クリスは暗い顔をしてもどってきた。
「ネガが見当たらなかったの。きっとデータ化してわからないところに保管してるんだと思う。
ねぇ、ここから出ましょうよ。でないと取り返しがつかないことになるわ。」
「でも、そんなことしたらマウグルが何をやってしまうか不安なの。
できれば彼には犯罪を犯してほしくない。
お兄さんは犯罪に手を染めてしまったから仕方なかったんだと思うけど、でも今から自分でいけないことだって反省してくれたら、犯罪者にならないでしょう?」
「じゃ、マウグルの女になるつもりなの?響さんを裏切るの?」
「裏切るなんて!・・・でも、いい方法がまだ浮かばないの。
なんとかマウグルを説得できればいいんだけど。
それに・・・今、響さんとこにもどっても、写真を送り付けられたら何もかも終わってしまうわ。
もう少しだけ、時間をもらえないかなぁ。」
「そうあなたがいうなら、かまわないけど、それで取り返しがつかない事にならないとは言えないわ。」
「そのときは、そんとき。じゃ、だめだよね。あはは、はぁ。
だけど、もう少し話してみる。」
「しょうがない子ね。とにかく、困ったことになってもすぐにあきらめちゃだめよ。また見に来るから。」
「ごめんね。ありがとクリス。」