夢への道は恋の花道?
ミチルが男の声に振り返ると、柏木響が笑いながら声をかけてきた。


「キョウ!今は僕の個人面談中だよ。」


「すみません、おそらく私の行なった試験についての話が出ると思われたので説明に伺わなくては・・・とやってまいりました。

個々のお妃候補に課題を与えてきましたが、ミチル様には私の手違いというか間違いで、少し年頃の娘にはいかがわしい内容の課題を与えてしまったのです。

じつはそれは男性士官用の課題だったのですが、ミチル様はご自身にご経験がないにもかかわらず、男女の接吻や異性というものについての自論を誠実に語ってくれました。

ですから、それを王子であるイディアム様に話をするのはとてもはずかしくて言えずお困りなのです。
私の落ち度です。申し訳ありませんでした。」



「なるほど・・・優秀な君にもそんなミスをすることがあるんだね。
でも、それで君が彼女を推した理由がわかった気がするよ。

ミチル、無理に聞こうとして悪かったな。
顔を赤らめ汗をかいているじゃないか。
まぁ・・・そんなかわいい顔が見られたのはうれしいよ。」


「あ、あの・・・。私は追い返されないのですか?」



「かわいいお妃候補は居てもらわなくては困るよ。
だけど、いいことがわかったな。

君はキスも知らない女の子なんだね。
初々しい女性に応募してもらえるなんて、ほんとにうれしくて感動だ。」


「そ、そんな・・・王子様なら国内の女性からも人気がおありなのではないのですか?」


「それがね、そうでもないんだよ。お恥ずかしいけどね。
この年までついつい仕事に突っ走りすぎてしまうとね、よからぬ噂をたてられてしまったりね。

男として欠陥があるんじゃないかとか、男好きだとか、絶倫すぎて付き合う女性が次々に白骨死体になってるんじゃないかってね。」


「な、なんてこと!・・・でも絶倫なんですか?」



「君が望むならがんばってもいいけど・・・どれも違う。
王位継承権を考えもせずに、事業をしていたんだ。

会社経営だよ。これでもいちおう社長ってやつね。
キョウが手伝ってくれるようになってから、すごく仕事が楽しくなったというか、業績がよくなって多忙になった。」



「柏木さん、すごいんですね。」


「ああ、優秀な僕の右腕・・・いや、僕の心臓につながる動脈だよ。
お妃選びのために、今は会社は柏木の部下に頼んであるけど、仕事の要所はパソコンでチェックしているし、重要な顧客については僕が電話で話をしているからね。

もしかしたら、お妃候補のどなたかに仕事で不自由をおかけするかもしれない。
そのときはミチルも悪く思わないでね。」


「はい、私は大丈夫です!」


「じゃ、面談は今夜はおしまい。
明日、ここに来たお妃候補の皆と顔合わせの宴をしてから、勉学や課題に取り組んでもらうことになるけど、がんばって。
これからよろしく頼む。

キョウ、彼女を部屋までお送りして。
それと女性を困らせてしまうミスは起こさぬように!」


「はっ。申し訳ございませんでした。
今後このようなことのないようにいたします。」
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