夢への道は恋の花道?
オジュロール内のロビーまで柏木と歩く間に、ミチルはさっきの助け舟的な会話のことを切り出した。
「どうして長いキスをしたって言わなかったんですか?」
「言って何かいいことでもあるんでしょうか?」
「他の候補にはキスしてないみたいな口ぶりだったわ。」
「ええ、していません。」
「えっ!!じゃ、私だけキスしたの?どうして・・・?」
「わかりません。」
「何よ、そんなの答えになってないわ!
私にとって・・・挨拶なんかの軽いキスだって未知なる体験だったのに。」
「体験できてよかったじゃないですか。」
「なっ・・・・・!そ、そんなのどの口が言ってるの、信じられなーーい!」
「まぁ、あなたがここに来る候補の最後でしたしね、課題を考えるのがめんどくさかったというのもありますけど、結局それがイディアム王子にとって好印象になったのですからよかったじゃないですか。
最初から気に入られなければ、同じスタート地点にも立てませんからね。」
「それはそうかもしれないけど・・・。でもお礼は言わないわ。
それに今度あんなことしたら、失踪してやるから。」
「肝に銘じておきましょう。明日からあなたにとって、試練の日が続くと思いますのでサポート役の私は全力でお助け申し上げます。
それだけはウソ偽りなく、ここで誓いましょう。
そろそろ、お住まいのオジュロールに着きます。
他のお妃候補も住んでおられますが、顔を合わせることはほぼないと思います。
建物のセキュリティとして誰かが出入りするときは玄関のドアが開かないようになっています。
開かないからと言って閉じ込められたわけではありませんので、お気をつけください。」
「わかりました。
明日からよろしくお願いします。」
ミチルはロビーからカエというミチル専属のメイドに案内されて部屋へともどった。
カエを見ていると、妹のミナトを思い出す。
「今頃どうしてるかなぁ・・・。
お金はなくても、家族でワイワイできることがすごく幸せだったとここに来て思えるわ。」
(だけど・・・ホームシックで泣くわけにはいかないわ。
私は王子様とラブラブは行けなかったとしても、願いはばっちりとかなえてもらうために、がんばらなくちゃ!)
ミチルは部屋のベッドに倒れこんで、しばらく枕を抱えたまま1日を振り返った。
自宅からイディアム王子との出会いまで長かったようなあっという間だったような・・・。
そして、いったい何が目的なのかわからない柏木と明日からずっと顔をあわせることになってしまうのだろうか?
(私はイディアム様のお妃候補だよね・・・。
イディアム様から愛されなくてはいけないのよね。
怖い印象はかなり消えて、ざっくばらんにお話できるみたいだし明日からがんばらなくっちゃ!
例え、お妃になれなかったとしても、王子にとってインパクトのある存在になれたならご褒美は大きいってきいたわ。
とにかく故郷に錦を!いや、家業を復興しなくては!)