四竜帝の大陸【赤の大陸編】
第四十一話
 ダルフェは、赤の<色持ち>として生まれた。
 そして、竜騎士でもあった。
 <色持ち>は必ずしも、竜騎士の性質を兼ね備えて生まれるわけではないが。
 ダルフェは、竜騎士だった。
 <赤の竜騎士>となったダルフェは、この大陸で多くの人間を殺した。
 男も、女も。
 老人も、子供も。赤子も。
 愉快げに、笑いながら。
 嗤いながら、人間を殺していた。

「ただの"殺戮”、だったんだよ」

 赤の竜族を害されたならば、五十の人間を斬り刻み。
 百の人間の首を、地に落とした。

「さつ、りく?」
「そう、殺戮。または虐殺?」

 人殺し。
 殺戮、虐殺。

「だから、姫さんも」

 りこ、りこよ。
 ダルフェがしたのは、ただそれだけのことだ。
 我からすれば、"ただそれだけのこと”なのだ。
 人の子が蟻を踏みつぶし、蝶の羽をむしるさまも。
 ダルフェが人間を裁ち、屠るさまも。
 我には、同じなのだ。

「俺のこと、怖がってもいいんだ」
「…………ダ、ダルッ」

 りこ。
 我は、貴女の想像以上に。
 我は、貴女には想像できぬほど。
 殺し、壊し、滅ぼした。
 それを。
 知られたくなかった、隠したかった。
 だが、我は。
 我は……それを知った時の、貴女の表情かおを見たいとも思ってしまうのだ。
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