四竜帝の大陸【赤の大陸編】
避難用の地下道は。
足元に特殊な光苔が等間隔に植えられていて、灯りなんてとても言えない弱弱しい光を放っていた。
人間の目には役に立たない微量なそれは、僕等竜族にとっては充分なものだった。
湿り気を帯びた空気は澱み、重苦しい。
「……バイロイト?」
目の前に転がっている、動かぬ塊は二つ。
片方の名を、僕は呼んだ。
「バイロイト」
バイロイトは、普通の竜族だから。
僕から見たら「こんなんで?」って思うくらいの傷で。
羨ましいくらいに、あっけなく。
死んでいた。
「……」
「支店長は首を損傷してます。傷が深い……出血性ショックによる死亡でしょう」
クロムウェルは術式で生み出した淡い光を自分の指先に乗せ、バイロイトを照らした。
いつもより少し低い声でそう言い、横たわるバイロイトの身体へと両手を伸ばし、肩へと担いだ。
「さすがにこの場合、足は腕の代わりにはなりませんから私が……シャゼリズ・ゾペロはどうします? 一応、頭部だけ持ち帰りますか? 必要なら、切断し保管処理を施しますが」
頭を狙えと、僕はバイロイトに言った。
でも、シャゼリズ・ゾペロの頭部は無傷だった。
うつぶせに倒れているシャゼリズは、右脹脛と胸部から出血していた。
「いらない」
僕は、足元に落ちている短剣へと視線を落としたまま答えた。
バイロイトの血が、光苔からじわりと滲む靄のような光に照らされていた。
シャゼリズ・ゾペロは契約によりバイロイトを傷つけられない……それは、術式での場合だ。
「バイロイトだけでいい」
多分。
バイロイトはシャゼリズ・ゾペロが現れた時。
奴の足を撃ち、足止めしての幼竜達を先に行かせたんだろう。
足元に特殊な光苔が等間隔に植えられていて、灯りなんてとても言えない弱弱しい光を放っていた。
人間の目には役に立たない微量なそれは、僕等竜族にとっては充分なものだった。
湿り気を帯びた空気は澱み、重苦しい。
「……バイロイト?」
目の前に転がっている、動かぬ塊は二つ。
片方の名を、僕は呼んだ。
「バイロイト」
バイロイトは、普通の竜族だから。
僕から見たら「こんなんで?」って思うくらいの傷で。
羨ましいくらいに、あっけなく。
死んでいた。
「……」
「支店長は首を損傷してます。傷が深い……出血性ショックによる死亡でしょう」
クロムウェルは術式で生み出した淡い光を自分の指先に乗せ、バイロイトを照らした。
いつもより少し低い声でそう言い、横たわるバイロイトの身体へと両手を伸ばし、肩へと担いだ。
「さすがにこの場合、足は腕の代わりにはなりませんから私が……シャゼリズ・ゾペロはどうします? 一応、頭部だけ持ち帰りますか? 必要なら、切断し保管処理を施しますが」
頭を狙えと、僕はバイロイトに言った。
でも、シャゼリズ・ゾペロの頭部は無傷だった。
うつぶせに倒れているシャゼリズは、右脹脛と胸部から出血していた。
「いらない」
僕は、足元に落ちている短剣へと視線を落としたまま答えた。
バイロイトの血が、光苔からじわりと滲む靄のような光に照らされていた。
シャゼリズ・ゾペロは契約によりバイロイトを傷つけられない……それは、術式での場合だ。
「バイロイトだけでいい」
多分。
バイロイトはシャゼリズ・ゾペロが現れた時。
奴の足を撃ち、足止めしての幼竜達を先に行かせたんだろう。