四竜帝の大陸【赤の大陸編】
左手をひらひらと……しっしと追い払うかのように動かす彼を忌々しげに睨みながら、彼女は悪態をつきながら荒い足取りでテントを飛び出して行った。
私と2人っきりになった少年は、再び私の前に両膝をついた。
さっきより近い距離で寄せられた彼の顔……あ、二重……密度の濃い睫は、くるんと上を向いてる。
年齢より利発で、気が強い男の子……この子に、手を貸してもらえないかな?
飼うなんて言ってたけど……子供の言うことだもの、本気とは思えない。

「……、、、…、、!」

私は自分の首にある輪止に手をやり、ジェスチャーで意思の疎通を図った。

「駄目だよ、それは外さない」

ううっ……通じたけど、即却下なんて!

「いいかい? お前は僕のペットになったんだ。僕がお前の“ご主人様”なんだからね?」

ぺ、ペット!?
この子……本当に、本気で私を飼う気なの!?

「僕が飼ってあげるから安心して。僕はお前に、こんな鎖はつけないよ? でも、逃げたら駄目だよ? 逃げようとしたら、竜族だっておじいちゃんに言っちゃうからね」

足元の鎖を右足で数回踏みつけ、邪気の無い笑顔でにこっと笑っているけれど。
言ってることは、年不相応に脅迫めいて物騒だった。

「アリシャリが……一族の人間が竜族を捕まえてこんな扱いをしてたなんて竜帝に知られたら、僕等の一族はきっと“仕返し”されちゃうから、おじいちゃんはお前を“無かったこと”にしちゃうだろうね。“無かったこと”の意味、わかるでしょ?」

無かった、こと?
それって……まさか……。

「わかる? 殺されて、どっかに埋められちゃうってことだよ」

ええええ!!
やっぱりそういうことなの!?



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