四竜帝の大陸【赤の大陸編】
第三話
星が去り、闇が薄まる。
静寂の夜に冷めた大気に、陽が融け始める。
目覚めを唄う鳥達の羽ばたきに押され、天の陽は熱を帯びた光となって地上へと流れ着く。
「……」
我は。
ここで、空を見上げていた。
その間に、自ら貫いた手の肉は痕無くもどったが。
痛みは、消えることも去ることも無く。
我と共にあった。
「…………」
皮膚を刺すような日光は、時の動きに合わせて柔らかな月光になり。
薄めた墨で描いたような雲が、夜空を漂うさまを眺めた。
この世界が生まれた時から繰り返されるそれは。
夜を日に継いで天を見上げる我の視線などお構い無しで、我の身の内で荒れ狂う獣の咆哮に臆することもなく。
天は定められた理のままに変化し動き、廻る。
「ヴェル」
「……」
声に振り向くことも、言葉を返すこともせず。
空を見上げる我に、<赤>は言う。
「ヴェル。いい加減、空など見飽きた頃でしょう?」
「……」
動かぬ我に焦れたのか、ブランジェーヌは自ら我の前へと移動し。
「ヴェルヴァイド」
両手を伸ばし、我の顔を掴んで自分のほうへと向きを変えた。
真紅の瞳が細まり、艶のある唇が柔らかな弧を描く。
静寂の夜に冷めた大気に、陽が融け始める。
目覚めを唄う鳥達の羽ばたきに押され、天の陽は熱を帯びた光となって地上へと流れ着く。
「……」
我は。
ここで、空を見上げていた。
その間に、自ら貫いた手の肉は痕無くもどったが。
痛みは、消えることも去ることも無く。
我と共にあった。
「…………」
皮膚を刺すような日光は、時の動きに合わせて柔らかな月光になり。
薄めた墨で描いたような雲が、夜空を漂うさまを眺めた。
この世界が生まれた時から繰り返されるそれは。
夜を日に継いで天を見上げる我の視線などお構い無しで、我の身の内で荒れ狂う獣の咆哮に臆することもなく。
天は定められた理のままに変化し動き、廻る。
「ヴェル」
「……」
声に振り向くことも、言葉を返すこともせず。
空を見上げる我に、<赤>は言う。
「ヴェル。いい加減、空など見飽きた頃でしょう?」
「……」
動かぬ我に焦れたのか、ブランジェーヌは自ら我の前へと移動し。
「ヴェルヴァイド」
両手を伸ばし、我の顔を掴んで自分のほうへと向きを変えた。
真紅の瞳が細まり、艶のある唇が柔らかな弧を描く。