四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「ありがとう。感謝するわ」

敷き詰められた象牙色のタイルに赤の竜帝の持つ赤が映り、色を変える。
それはまるで。
世に不変なものなど無いのだということを、黙して説いているかのようであり……。

変わることは罪か?
変わらぬことが罪なのか?
我には分からない。
……それを真に判る者が、この世にいるのだろうか?

「………………何に対しての、だ?」

ブランジェーヌの言葉の意味が掴めず訊ねると。

「分からないの? ジリギエのことよ?」

我の顔から離した手を、ブランジェーヌは自らの顎に添えて顔を傾げた。
磨かれた爪には、砕いた貴石で模様が描かれていた。
真紅の爪を飾るのは、碧の螺旋。
その曲線にあるのは、母親としての願い。
先に逝くことを定められた、息子への……。

「……幼生?」

あの幼生は。
ダルフェとカイユの子であり。
ブランジェーヌの孫でもある。

「ダルフェの時のようには、あの子はならなかった。だから、ありがとうと言ったの」
「……」

その言葉に、気づかされる。


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