四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「<赤>、これでいいか?」
<赤>にいわれるまま、5ミテほどダルフェ達から距離をとった。
「ありがとう、ヴェル」
普通の竜族と違い、竜騎士という個体は我を絶対的強者として認識してしまう。
そのため、中には萎縮するだけでなく稀には失神する過敏な個体もある。
失神しようが失禁しようが、我はどうでも良いのだが……。
「クルシェーミカ、マーレジャル。ヴェルヴァイドのことは出来るだけ存在を意識せず、視界に入れるのも止めなさい。あなた達はこの人が“居る”ことに慣れていないのだから」
狩り入れ前の麦の穂のような色をした短髪の雄と、伸ばした赤茶の髪を後ろで編んでいる雌に、<赤>が我へと視線を流し、苦笑しつつ言う。
「はい、陛下」
「え、は、はい!」
<主>の言葉に、2人は真剣な顔で頷く。
雄のほうは大丈夫だろうが、あの赤茶の髪の雌は“駄目”だな。
赤茶のあれより、ダルフェが稽古をつけていた青の幼竜共のほうが『質』が良い。
あれらは幼竜だが、赤茶は成竜……そうか……そうだな。
失神ならともかく、成竜になって人前で失禁などしたら“イロイロ拙い”のだろう。
糞尿に縁の無い我には良く分からぬが、きっと“イロイロ拙い”……実は“イロイロ拙い”の意味を掴みかねておる我だが、とりあえずこれでよしとしよう。
「久しぶりだな、ダルフェ」
雄竜が笑みをダルフェに笑いかけ。
「ダルフェ、お帰りなさい!」
頬を染め、視線を泳がせた雌が衣類を差し出す。
「はい、これ着てね。赤の竜騎士の制服、懐かしいでしょう?」
「サンキュ、マーレジャル」
赤茶……マーレジャルというまだ幼さの残る雌から衣類を受け取りながら、ダルフェが言うと。
「ねぇ、ダルフェ! この人がカイユさんでしょ!? 綺麗な人ね。……あれ? 髪が短い? 青の大陸ではつがいが生きてるのに、こんなに短くするの? ええ~、それって縁起悪いっていうか、なんかやだなぁ~」
焼きすぎた栗のような色の瞳でカイユを見、そう言った赤茶の言葉にダルフェの垂れた目がさらに垂れた。
「髪? ああ、縁起とかそんなのどうだっていいんだよ。俺のハニーはすっげぇ美人だから、どんな髪型だって最高に綺麗なんだ。うなじのチラ見加減なんか、もう最高なんだぜ?」
ブランジェーヌは微笑んだまま、何も言わない。
赤の眼球だけが動き、カイユを捉えている。
白い手袋をしたカイユの手を、指を見ていた。
「カイユさん、はじめまして! あたしは赤の竜騎士マーレジャル。青の竜帝陛下の失態のせいでこんな状況になっちゃって、貴女も大変よねぇ~。うちの陛下だったら、こんな事にならなかったもの。あたし、赤の竜族に生まれて良かった~。やっぱりうちの陛下が一番だわ! そうだ! カイユさんも、赤の竜騎士になっちゃえば?」
「……」
カイユの水色の瞳が、微かに動いた。
いまだに服を着ず胡坐をかいて座ったままのダルフェがそれに気づき、頷く。
<赤>にいわれるまま、5ミテほどダルフェ達から距離をとった。
「ありがとう、ヴェル」
普通の竜族と違い、竜騎士という個体は我を絶対的強者として認識してしまう。
そのため、中には萎縮するだけでなく稀には失神する過敏な個体もある。
失神しようが失禁しようが、我はどうでも良いのだが……。
「クルシェーミカ、マーレジャル。ヴェルヴァイドのことは出来るだけ存在を意識せず、視界に入れるのも止めなさい。あなた達はこの人が“居る”ことに慣れていないのだから」
狩り入れ前の麦の穂のような色をした短髪の雄と、伸ばした赤茶の髪を後ろで編んでいる雌に、<赤>が我へと視線を流し、苦笑しつつ言う。
「はい、陛下」
「え、は、はい!」
<主>の言葉に、2人は真剣な顔で頷く。
雄のほうは大丈夫だろうが、あの赤茶の髪の雌は“駄目”だな。
赤茶のあれより、ダルフェが稽古をつけていた青の幼竜共のほうが『質』が良い。
あれらは幼竜だが、赤茶は成竜……そうか……そうだな。
失神ならともかく、成竜になって人前で失禁などしたら“イロイロ拙い”のだろう。
糞尿に縁の無い我には良く分からぬが、きっと“イロイロ拙い”……実は“イロイロ拙い”の意味を掴みかねておる我だが、とりあえずこれでよしとしよう。
「久しぶりだな、ダルフェ」
雄竜が笑みをダルフェに笑いかけ。
「ダルフェ、お帰りなさい!」
頬を染め、視線を泳がせた雌が衣類を差し出す。
「はい、これ着てね。赤の竜騎士の制服、懐かしいでしょう?」
「サンキュ、マーレジャル」
赤茶……マーレジャルというまだ幼さの残る雌から衣類を受け取りながら、ダルフェが言うと。
「ねぇ、ダルフェ! この人がカイユさんでしょ!? 綺麗な人ね。……あれ? 髪が短い? 青の大陸ではつがいが生きてるのに、こんなに短くするの? ええ~、それって縁起悪いっていうか、なんかやだなぁ~」
焼きすぎた栗のような色の瞳でカイユを見、そう言った赤茶の言葉にダルフェの垂れた目がさらに垂れた。
「髪? ああ、縁起とかそんなのどうだっていいんだよ。俺のハニーはすっげぇ美人だから、どんな髪型だって最高に綺麗なんだ。うなじのチラ見加減なんか、もう最高なんだぜ?」
ブランジェーヌは微笑んだまま、何も言わない。
赤の眼球だけが動き、カイユを捉えている。
白い手袋をしたカイユの手を、指を見ていた。
「カイユさん、はじめまして! あたしは赤の竜騎士マーレジャル。青の竜帝陛下の失態のせいでこんな状況になっちゃって、貴女も大変よねぇ~。うちの陛下だったら、こんな事にならなかったもの。あたし、赤の竜族に生まれて良かった~。やっぱりうちの陛下が一番だわ! そうだ! カイユさんも、赤の竜騎士になっちゃえば?」
「……」
カイユの水色の瞳が、微かに動いた。
いまだに服を着ず胡坐をかいて座ったままのダルフェがそれに気づき、頷く。