四竜帝の大陸【赤の大陸編】
りこが御伽噺に登場する精霊のようだと讃えたその見た目と違い、青の竜騎士の中でもカイユは特に暴力的な個体なのだとランズゲルグがこぼしていたが。

「<主>の役に立たない竜騎士など無意味。赤の陛下、ご許可頂ければカイユが廃棄して差し上げますが?」
「その必要はないわ。貴女のおかげで、この子達はこれから伸びる」

カイユは雄竜から退き、刀を朱塗りの鞘へ戻し<赤>へと歩み寄り。

「陛下のお庭を汚し、申し訳ありません」

深々と、一礼した。
赤の竜騎士を地に這わせたことではなく。
庭園を少々汚したことを詫びたカイユに、<赤>が苦笑したまま答えようと唇を開いた瞬間。


 
「ッ!?」



我の意識に。
鋼鉄の大槌で脳の中央を打ち据えられたかのような、衝撃。

「どうしたんすか? 旦那!?」

両手で頭を抱え込むようにして、膝をついた我に気づき。
ダルフェ達が声をあげた。

「ヴェルヴァイド様!?」
「ヴェルヴァイドッ!」

 耳から脳髄やら何やらが飛び出しそうな我に、それらの『音』は邪魔なものでしかなかった。

「う……るさいっ! 我の邪魔をするなっ! 黙らねば城ごと消すぞっ!!」

脳が。

心臓が。

肉を破り、天へと駆け出しそうだ。

抱えた頭に爪をたて、身が裂けるのを抑えこむ。


「がぁああぁあああああああああああああああああ!!」


我の『中』が、荒れ狂う。

血肉が狂喜し、血管を噛み砕き神経を引き裂く。

我が。
我が欲するもの。

それは。
我が待ち焦がれた。

---ーーーーークッ!

「…………りっ」

---ーーーーーハクッ!

声。

「……りっ……り」

 あぁ、これは。


「りこぉおおおおおおおおおおおおっ!!」


愛しい貴女の。
我を呼ぶ、声。





 
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