四竜帝の大陸【赤の大陸編】
第五話
いつも。
ハクと私は。
この世界で。
私達は、いつも一緒だった。

この世界に来て、出会い。
恋をして、愛して。

一緒に朝の陽を見て目を細め。
一緒に夜空に煌めく星を眺め。

いつも、一緒で。
いつも、2人で。

貴方の鱗に覆われた4本指の小さな手を握って、2人で雪の舞う庭を歩いた。
貴方の大きな手と指を絡めて、塔のバルコニーから夕焼けを映す湖を眺めた。

眠りに落ちる時には。
ふわりとした優しいキスが降り注ぎ。
目覚めには。
蕩けるような黄金の瞳を細めた貴方が、身体に染み入る声で言ってくれる。

--おはよう、我のりこ。

私の頬に、そっと触れる指先には真珠のような爪が輝く。

--りこ、りこ。おはようの“ちゅう”をしてくれ。

ベットに腰掛けた貴方が。
緩やかな曲線を持つ長い髪をかき上げ、あらわになった白い額を私へ近づけ。

--昨夜の我は『良い子さん』だっただろう? 褒美を得る資格があると思うのだ。ゆえに、平素より多めに……額と左右の頬、“ここ”には特に長めに頼む。

私の唇を親指でなぞりながら、大真面目な顔で貴方は言う。
昨夜の我は『良い子さん』……数秒間、その言葉の意味を考えて……ぼんっと一気に私の体温が上がる。

ーーあ……ひっ!? あ、あああのですねっ、昨夜はそのっ! お、おおお、おはっ! おはようござっ、ございますです!
--……りこ。

熱々で、真っ赤になっているであろう私の顔を身を屈めて覗き込み。

--りこよ。茹でた蛸に欲情できぬ我だが、茹でた蛸にのようなりこには、我はかくも容易く欲情する。これはりこの所為なので、りこに責任をとってもらわねばな?

そう言って。
私の肌を、皮膚を。
存在を確かめるかのように丁寧に這う体温の低い指先は、冷たいのにとっても優しくて。
私は。
私は……。

--ハク……好き、貴方が大好き。

この人がなにより誰より愛しい、と。

--そうか。我もりこが大好きなのだ。

ハクが愛しいと。
毎朝、毎晩。
昨日も、今日も、明後日も。
貴方を想う気持ちは、日々増していく。

ハクと一緒に生きていける、この限られた時間は。
全部、全て。
貴方と共に……。




 
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