四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「くっ……アリシャリ、私は手を引く! 竜族は人間とは比べ物にならないほど耳いいんだ! この雌が呼べば、つがいを探している雄が、半狂乱でここへすっ飛んで来るんだぞ!?」
「ッ!?」
その言葉に、アリシャリが息を呑む。
これでもかと見開いた濃茶の瞳が私を、私の咽喉を、口を凝視した。
「や、ややっ、やめ……呼ぶなっ……やめろろぉおおおおおっ!!」
私は竜にはなれない。
私にできるのは。
私が、今したいのは。
「……ハク」
大好きなあの人の名を、この口で。
誰より会いたいあの人を、呼ぶこと。
「ハ……ク、ハク! ハクッ!!」
叫んだ。
これ以上はないほど、大きな声で。
声に力を、想いを込めて。
「ハクッ!!!」
貴方の名を、貴方を。
「ハ……ク? それがお前のつがいの名か!? アリシャリ、何を呆けている!? 死にたくなかったら急いでここを離れるんだ!! 今、この雌は雄を呼んだんだぞ!? 急げっ!!」
私に背を向けて走り出そうとした術士の外套を、私の買い手だとアリシャリが言った初老の男性が、その見た目からは想像出来ない素早い動きで掴んで引き止めた。
「なっ……離せっ!」
その手を払おうと身を捩った術士を逃すまいと、さらに全身でしがみつく。
「ッ!?」
その言葉に、アリシャリが息を呑む。
これでもかと見開いた濃茶の瞳が私を、私の咽喉を、口を凝視した。
「や、ややっ、やめ……呼ぶなっ……やめろろぉおおおおおっ!!」
私は竜にはなれない。
私にできるのは。
私が、今したいのは。
「……ハク」
大好きなあの人の名を、この口で。
誰より会いたいあの人を、呼ぶこと。
「ハ……ク、ハク! ハクッ!!」
叫んだ。
これ以上はないほど、大きな声で。
声に力を、想いを込めて。
「ハクッ!!!」
貴方の名を、貴方を。
「ハ……ク? それがお前のつがいの名か!? アリシャリ、何を呆けている!? 死にたくなかったら急いでここを離れるんだ!! 今、この雌は雄を呼んだんだぞ!? 急げっ!!」
私に背を向けて走り出そうとした術士の外套を、私の買い手だとアリシャリが言った初老の男性が、その見た目からは想像出来ない素早い動きで掴んで引き止めた。
「なっ……離せっ!」
その手を払おうと身を捩った術士を逃すまいと、さらに全身でしがみつく。