四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「待て、待ってくれ! 頼む、この雌を捕まえてくれ! な、なんとかならないのか!? 術士殿、金なら払う! 置いていくなど、もったいないだろう!? 買う、この俺が買う! いくらだ!? この雌を手に入れるには、いくら払えばいいんだ!?」
それに答えた声は。
問われた術士のものでは無く。
「……いくら、だと?」
宙を裂き響くその声に、風は動きを止め大気が軋む。
呼吸することさえ忘れたように。
その場の誰もが、突然そこに存在した“彼”を見る。
「お前は今、そう言ったのか? 肥えた家畜よ」
揺らぐ白銀に、陽が平伏し。
その足元に這い蹲るように、影となる。
「ひ、ひぃっ!?」
問いを、居るはずの無い存在に問われ返された初老の男性は、しがみついていた術士の身体からゆるゆると手を離し、不出来な玩具のようにぎこちなく顎を動かして長身の彼を見上げた。
「あ、ああああ……ななな、あんた、なんっ!?」
本能が見るな逃げろと泣き叫んでも。
「……このひとの値?」
一瞬で魂を握り潰され侵されて、逃れる術を失って。
魅せられ、引き摺られ、飲み込まれ……誰もが“彼”に奪われるのだと、私は知っている。
「世界中の富を掻き集めても足りぬに決まっておるだろうがぁあああああっ!!!!」
それに答えた声は。
問われた術士のものでは無く。
「……いくら、だと?」
宙を裂き響くその声に、風は動きを止め大気が軋む。
呼吸することさえ忘れたように。
その場の誰もが、突然そこに存在した“彼”を見る。
「お前は今、そう言ったのか? 肥えた家畜よ」
揺らぐ白銀に、陽が平伏し。
その足元に這い蹲るように、影となる。
「ひ、ひぃっ!?」
問いを、居るはずの無い存在に問われ返された初老の男性は、しがみついていた術士の身体からゆるゆると手を離し、不出来な玩具のようにぎこちなく顎を動かして長身の彼を見上げた。
「あ、ああああ……ななな、あんた、なんっ!?」
本能が見るな逃げろと泣き叫んでも。
「……このひとの値?」
一瞬で魂を握り潰され侵されて、逃れる術を失って。
魅せられ、引き摺られ、飲み込まれ……誰もが“彼”に奪われるのだと、私は知っている。
「世界中の富を掻き集めても足りぬに決まっておるだろうがぁあああああっ!!!!」