四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「あ……」
私が言葉を探していると。
「む? ……あぁ、そうであったな」
背を撫でていたハクの手が後頭部に移動し。
「りこは我だけ見ておれば良いのだ」
ハクの顔へと、ぐいっと寄せられた。
間近にある金の瞳に映るのは、私……私だけだった。
「ハク……でも、ハクちゃんっ……」
意気地なしの私の言葉に。
「“でも”、と貴女は言うのか?」
迷いも容赦も無いハクの言葉が重なる。
「ならば、全てを“消す”すまでだ」
「なっ……ハクッ!?」
全て消す。
その意味は。
それはっ……。
「見るモノが無ければ、見ようが無いであろう?」
「ハク、それはっ……ッ!?」
私の目元を、濡れた感触が滑る。
熱を持ったハクの舌が、右目の周囲を這い……そのまま肌を伝って左目へと……。
「ぁ……んっ……ハク?」
「りこ、りこよ……我以外全て無くなれば。りこのこの眼は、我だけを見てくれるのか? それとも……二度と、我を見てはくれなくなってしまうのか? ……りこ、りこ」
思わずぎゅっと目をつぶると、冷たい唇が瞼の上から包み込むようにやわやわと食み。
閉じられたことを惜しむかのように目頭を舌先で突き、睫毛の生え際を何度も往復して……。
「ぁあ、あ……ん、ハ……」
その舌先に、理性も常識も絡めとられて。
思考がどろりと熱く溶けて……。
「旦那、物騒で笑えない自己中発言でやめなさいな。今はそんなことより、ほら、よく見てごらんなさいって。姫さん、顔色悪いでしょう? ろくなモン食ってないだろうし、疲れて具合悪くて当たり前! さっさと城に連れて帰って美味いモン食わせて風呂に入れてやって、寝かせてや……あ、まぁ、あんたのことだから、やることやって寝かしつけるんでしょうけど」
「? やることとはなんだ? 食事や風呂より、まずはりこの体調を戻すためにも失った気の補給を兼ねて交っ……ぶごっ!?」
私はハクの口を両手で押さえて、ダルフェさんに向けた顔を左右に振る。
そんな私に、ダルフェさんはニヤリと微笑む。
「すまんねぇ、姫さん。旦那もこの一週間いろいろ限界だっただろうから、弱ってるとこ申し訳ないけど、世界平和のために旦那に付き合ってやって……ん?……おい! ハニー、カイユ! それ以上は“今は”止めろ。その餓鬼に手を出すなよ?」
カイユさんはいつの間にか移動し、シャデル君のすぐ側に立っていた。
シャデル君は地面に蹲ったまま、顔だけあげてカイユさんを……アリシャリの腕を持ったまま、無言で自分を見下ろすカイユさんを見ていた。
「……」
「ひっ……ぁあ、ああ」
痙攣を起こしたかのように震えるシャデル君を見下ろす水色の瞳は、清く澄んだ泉のように綺麗で……冷たかった。
私が言葉を探していると。
「む? ……あぁ、そうであったな」
背を撫でていたハクの手が後頭部に移動し。
「りこは我だけ見ておれば良いのだ」
ハクの顔へと、ぐいっと寄せられた。
間近にある金の瞳に映るのは、私……私だけだった。
「ハク……でも、ハクちゃんっ……」
意気地なしの私の言葉に。
「“でも”、と貴女は言うのか?」
迷いも容赦も無いハクの言葉が重なる。
「ならば、全てを“消す”すまでだ」
「なっ……ハクッ!?」
全て消す。
その意味は。
それはっ……。
「見るモノが無ければ、見ようが無いであろう?」
「ハク、それはっ……ッ!?」
私の目元を、濡れた感触が滑る。
熱を持ったハクの舌が、右目の周囲を這い……そのまま肌を伝って左目へと……。
「ぁ……んっ……ハク?」
「りこ、りこよ……我以外全て無くなれば。りこのこの眼は、我だけを見てくれるのか? それとも……二度と、我を見てはくれなくなってしまうのか? ……りこ、りこ」
思わずぎゅっと目をつぶると、冷たい唇が瞼の上から包み込むようにやわやわと食み。
閉じられたことを惜しむかのように目頭を舌先で突き、睫毛の生え際を何度も往復して……。
「ぁあ、あ……ん、ハ……」
その舌先に、理性も常識も絡めとられて。
思考がどろりと熱く溶けて……。
「旦那、物騒で笑えない自己中発言でやめなさいな。今はそんなことより、ほら、よく見てごらんなさいって。姫さん、顔色悪いでしょう? ろくなモン食ってないだろうし、疲れて具合悪くて当たり前! さっさと城に連れて帰って美味いモン食わせて風呂に入れてやって、寝かせてや……あ、まぁ、あんたのことだから、やることやって寝かしつけるんでしょうけど」
「? やることとはなんだ? 食事や風呂より、まずはりこの体調を戻すためにも失った気の補給を兼ねて交っ……ぶごっ!?」
私はハクの口を両手で押さえて、ダルフェさんに向けた顔を左右に振る。
そんな私に、ダルフェさんはニヤリと微笑む。
「すまんねぇ、姫さん。旦那もこの一週間いろいろ限界だっただろうから、弱ってるとこ申し訳ないけど、世界平和のために旦那に付き合ってやって……ん?……おい! ハニー、カイユ! それ以上は“今は”止めろ。その餓鬼に手を出すなよ?」
カイユさんはいつの間にか移動し、シャデル君のすぐ側に立っていた。
シャデル君は地面に蹲ったまま、顔だけあげてカイユさんを……アリシャリの腕を持ったまま、無言で自分を見下ろすカイユさんを見ていた。
「……」
「ひっ……ぁあ、ああ」
痙攣を起こしたかのように震えるシャデル君を見下ろす水色の瞳は、清く澄んだ泉のように綺麗で……冷たかった。