四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「ひッ!?」

 真っ青なシャデル君の咽喉からは、ひゅぐっという異音が……。

「ハ、ハクッ! 彼は違うの! シャデル君はっ……ハク?」
「…………」

 ハクの黄金の瞳は、シャデル君を見ていなかった。
 腕に抱いた私を、見ていた。
 私の口元より下……首?

「りこのここに…………か?」 

 言いながら、ハクの指先が私の咽喉を左から右へとなぞる様に動いた。

「ハク? どうし……」

 優しく、労わるように何度も往復する指先を止めたのは。
 
「足をどかしなさいって、旦那! 腕1本できゃーきゃー言ってる子の前で何やってるんすかぁ!? 頭潰す気……ん? あぁ、“そういうこ”とね」

 なにかを察したような、ダルフェさんの声だった。

「…………“そういうこと”だ」

 動きを止めたハクの指が私の咽喉から、皮膚から離れる。

「あのね、ハク。彼は、シャデル君はね、私を助けてくっ……」

 私の言葉を不要だと遮ったのは、ハクだった。

「その先はいらぬ。これの中を視た」

 え? 

「……み……た?」

 見た?
 視た?
 視たって、なに?
 それって、どういう意味?


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