四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「あの術士、赤の陛下のつがいの雄竜がかなりのお人好しだってのを知った途端、影でちょっかい出しやがったから、俺が基点潰して帝都から抛り投げてやったんですよ」

 赤の竜帝さんは、ダルフェさんのお母さん。
 そのつがいは、ダルフェさんのお父さん……影でちょっかい?

「帝都の崖下で、死肉好きなハイエナ共に食われたって思ってたんですがねぇ~。くくくっ……生きてるとわねぇ。確認を怠った結果が、この事態……俺としたことが、なんつー大失態………………申し訳ありません、ヴェルヴァイド様」

 赤い髪を持つ頭部が、下がる。
 深々と……。
 それを見たカイユさんからは、大きな溜め息。
 ハクちゃんは、何も言わない。
 ただ、視線を動かしただけ。
 黄金の瞳が捕らえたのは、金具部分にシャデル君の血の付いた首輪……輪止。
 それをじーっとハクが見ていることに、頭を上げたダルフェさんが気づく。

「あぁ、それのせいで姫さんは旦那を呼べなかったんすねぇ。それをつけられると竜族は竜体になれねぇし、声も出なくなる。竜騎士なら力技で外せますが、普通の竜族にはまず無理ですし。竜族が闇市で売買されるときは、大抵それが……ちっ、胸糞悪いったらねぇ!」

 忌々しそうどころか、その顔には嫌悪と怒りが露わになっていた。

「…………輪止、か。そのような物が赤の大陸はあるとは、我は知らなかったのだ」

 言いながら、ハクは落ちている輪止へと歩み寄り。
 左足で、それを踏み付けた。


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