四竜帝の大陸【赤の大陸編】
第十話
ダルフェさんとカイユさんを残して。
ハクは、転移をした。
一瞬の浮遊感の後、着いたのは……彼に抱かれた状態の私には、室内としかわからなくて。

「ここは? ハクちゃ……っ!」

尋ねようと開いた私に返されたのは。
答えじゃなくて、ハクの熱。

「んっ………ぁ…んんっ……」

熱を。
有無を言わさず、唇から与えられたそれを。
私が拒むなんて、有り得なくて。
深く濃く、混じり合いたくて。
夢中で、その熱にすがり。
必死に、その熱を乞う。

「……りこ」

甘い苦しさに、彼の腕をぎゅうと掴むと。
呼吸を促すように、唇が動き。
ほんの少し、彼と私の間に隙間が出来た。

「りこ」

はぁ、と。
自分の口から漏れるそれは。
熱くて、隠しようも無く湿り、濡れ、艶を含んでいた。
それを恥ずかしいと思う余裕など、私には無く……。

「りこ、我の……りこ」

睫毛が触れ合いそうなほどの至近距離でも、黄金の瞳が閉じられることはなくて。
胸いっぱいに、空気を取り入れる私を映す。

「りこ、りこ……」

彼の腕の中では、空気は色も味も奇跡のように変わってしまう。
色は、白金できらきらしていて。
蕩けるような、甘い香りで……。



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