四竜帝の大陸【赤の大陸編】
前に会った時は、可愛らしいおちび竜だったけれど……あのダルフェさんお母様なんだから綺麗なんだろうとは思っていたけど、想像以上の……。  
四竜帝の一人というより彼のお母さんなのだという思いが先にくるのは、二人に共通する『色』のせい。
私にとってこの『赤』は、ダルフェさんの『色』だから……目にすると、親しみと安堵が身の内からほわりと浮かぶ。
そんな私とは対照的にハクの声はいつもより少し低く、不機嫌丸出しだった。

「…………出て行け、<赤>」

そんなハクに全く怯むことなく、赤の竜帝さんは即答した。
 
「嫌」

私は見られてしまった恥ずかしさより、ほっとした気持ちのほうが強かったけれど。
ハクちゃんは、その逆だった。
つり目がさらにつり上がり、凶悪魔王顔になっていた。

「……ブランジェーヌッ」

「嫌よ」

嫌よと言いながら、彼女はにこりと笑む。
す、すごい。
青の竜帝さんだったら、クソじじぃいいい~って叫びながら両手で頭をがしがししそうっ。

「貴方が帰ってきてくれて、ほっとしたわ。今回の事でトリィさんを人間からも私達竜族からも貴方が“隠して”しまうんじゃないかって、<黒>が危惧していたわよ?」

ハクと私、そして赤の竜帝さんがいるのは外の緑が映える大きな窓のある部屋で、中央のキングサイズのベッドには緋色の寝具。
壁も床も薄い朱色のマーブル模様を持つ光沢のある石で出来ていて、天井からは朝顔の形をした真鍮製の照明器具等間隔に三つ下がっていた。
ベッド以外に置かれているものは無く、向かって右の壁に扉が一つ、左に二つ。
つまり、他にも部屋があるってことで……。
ハクちゃんは寝室に直行したってこと?
赤の竜帝さんはそれを見越して、ここで待っていたってことよね!?
うう、かなり恥ずかしいです……。

「トリィさんは乾燥地帯で保護したの? 可哀想に、髪にまで砂が……湯浴みと着替えをさせてあげなければ」

言いながら、白い腕が私へと伸びる。

「ヴェルヴァイド。トリィさんを私に」
「………………」

私を抱くハクの腕に、ぎゅっと力が加わる。
言葉にはしなかったけれど、それが彼の答え。



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