四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「ヴェルヴァイド、ヴェル」

真っ赤な瞳が無言のハクと私を交互に見て、左右に動く。

「駄目よ? 私がいるのが分かっていながら、お構いなし進めようとする今の貴方じゃ駄目。手酷く扱う結果になって、自業自得の貴方が後悔するのはかまわない。でも、トリィさんが心身共に傷つくのは“祖母”として許せない」
「お前はりこの祖母ではない。我はカイユをりこの『母』にしたが、お前を祖母にした覚えは無い」
「丁度良い機会だわ。いますぐ認めて。ねぇ、トリィさん。カイユは息子の嫁(つがい)なんだから、私はトリィさんの“お祖母ちゃん”で良いわよね? あら、ここにも砂が……」
「え、あ、あのっ……」

赤の竜帝さんの指先が、私の額に触れた。
優しい動作と温か体温……それを拒んだのは私ではなくハクだった。

「我のりこに触れるなっ!」

ぱんっ、という音に。
私の心臓が飛び跳ねた。
私に触れていた赤の竜帝さんの手をハクがはらった……ひっ!?
はらわれた手、指が有り得ない方向に向いてますけどっ!?

「あら、酷いわね。折れちゃったじゃない。あ、すぐ治るから気にしないでいいのよ、トリィさん」

お祖母ちゃん発言とか、指があっちむいてホイ状態でぶらぶらしてるとかで脳内大混乱の私に構わず、強引なほどのマイペースさで赤の竜帝さんは話を続ける。

「ふふ。トリィさんったら、そんな顔しないで……大丈夫よ? ほら、もう治ったでしょう? ……トリィさんの目の前でこんなことをしてしまうほど、貴方は苛ついてるのよ? もっと自覚してちょうだい」

私の目の前で指を動かして、折れた指の治癒が済んだことを証明してくれながら、彼女はそう言った。

「………………ダルフェといい、お前といい。親子揃って…………自覚? 自覚などっ……我はっ……」

ハクちゃんの腕の力が、ふっと弱まったかと思うと。

「…………」

横抱きにしていた私を、彼は赤の竜帝さんに差し出した。
ぴったりと触れ合っていたハクとの間に急に隙間ができてしまい、私は途端に不安になる。

「やっ…!!」


とっさに。
右手で彼の髪を掴んでいた。




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