黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

 ―――八幡橋交差点の幽霊―――
 インターネットの情報によると、夕方から深夜にかけて横断歩道の押しボタン付近で少女の幽霊が目撃されているらしい。そして、その少女は目が合うとニヤリと薄く笑い、自宅までついてきて呪い殺す・・・とかどうとか。

 いつも思うが、もし誰かが死んでいるなら、誰が呪い殺されたと立証したのだろう?
 でもまあ、とりあえず、目を合わせない方が良いだろう。
 数珠に手を置き、交差点の方向を凝視する。

 いる。
 思った通りだ。
 交差点に禍々しい気配を放つ朱色の人影が見える。
 白い人影と違い全身に鳥肌が立つ。そのプレッシャーは悪霊と呼ぶに相応しい存在だ。

 ゴクリと唾を飲み込み、自転車を置いて交差点に向かって歩き始める。俺の目的は、悪霊を成仏させる事だ。どうすれば良いのか分からないが、接触してみるしかない。

 1歩2歩、震える足を叱咤して少しずつ近付いて行く。
 赤い少女は車道側を向いていて、こちらには無反応だ。自分が見られているとは、思ってもいないのだろう。

 10メートルを切る。
 近くで見ると、少女が赤い訳ではなく、強烈な赤い光を発しているのだと気付いた。少女自身は、まるっきり人間のままだ。

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