黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
白いワンピースの裾をユラユラと揺らしながら、斜め下のアスファルトを見詰める可憐な姿。肩より少し短めの髪、その髪に着けられたら可愛いテントウ虫のヘアピン。
それに油断したのかも知れない。
5メートル。
何の前触れもなく、少女が振り向く。
視線を逸らそうとするが間に合わず、空虚な漆黒の瞳に射抜かれた。
「ヤバい」そう思った時は、既に遅かった。
少女は白眼が無い真っ黒な瞳を三日月の様に細め、白い歯を見せてニヤリと笑った。
その瞬間、全身をビリビリと痺れる様な感覚が駆け抜けた。
余りの異様な感覚に、慌てて後ろを向き視線を遮るために下を向く。しかしその直後、声にならない悲鳴を上げ、仰向けに倒れ込んだ。
交差点にいたはずの少女が、その場所にしゃがんで、俺を見上げていたのだ!!
少女はアスファルトに尻餅をつく格好になっている俺に近付き、無表情で見下ろす。その姿が、見る間に変化する。
一筋の鮮血が少女の眉間を流れ落ち、額から顔の皮が剥がれ始める。そして、目玉が割れた卵の様に垂れ下がり、髪の毛がバサバサと抜け落ちた。呼吸さえできない俺に向かって伸びてくる手は、既に白骨化している。
「や、やめてくれ───!!」
そう叫んだ瞬間、骸骨になった少女が忽然と消えた。周囲を見渡すが身の回りどころか、交差点のどこにも少女の姿は無かった。
一体何だったんだ?