黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

「誰?」

 誰って、着信見てないのかよ。

「朝の、あの・・・駅で」
「ああ、雅治?何か用?」

 ぶっきらぼうというより、突き放す様な話し方をする瑠衣。

「ちょっと聞きたい事があって」

 俺は八幡橋交差点での出来事を瑠衣に話し、素直に悪霊を成仏させる方法を尋ねた。瑠衣は「自分は霊感が強い女子高生に過ぎない」と前置きをして、その問いに答える。

「耳を傾ける」
「え?」
「耳を傾ける・・・としか、私には言えない。どんな霊も何かの未練、想いや願いに縛られてる。それが分かれば、何とかなるかも知れない」
「うん」
「ただ、余り同調しないこと。近付き過ぎると、ホントに連れて行かれるよ」

 連れて行かれる。つまり、死ぬかも知れないということか?

「分かった」
「ホントに分かったの?・・・いーけど。まあ、明日まで生きてたら報告よろしく!!」

 一方的に切られた。

 一筋の光明が見えた俺は、今更の様に空腹である事に気付く。考えてみれば、あの日以来何も食べていない。服からも異様な臭いがする。臨戦態勢に入ろう。

 止まっていた針が、軋みながら動き始める。
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