黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
ダイニングに下りると、夕食の支度をしていた母親が目を見開いた。そして、無言で食卓に座る俺に、泣いているのか笑っているのか分からない顔で御飯を並べる。
何も聞かない。
静かな時間が流れる。
「ごちそうさま」
立ち上がり、風呂場に向かう。洗面台で自分が写る鏡を見て、思わず苦笑い。まるで幽鬼だ。こんな状態で外に出ていたのか。
シャワーを浴び、髪を整え、いつもの自分に戻る。時刻は21時を少し回った辺り。あの噂が本当ならば、もう少女の悪霊にいつ襲われてもおかしくない。
俺は階段を上がり、自分の部屋に戻った。部屋の真ん中に腕を組んで座り、覚悟を決め腕を組んで待ち構える。
自宅前の道を通る車が減り、辺りを静寂が包み始める。霊感など全く無いが、空気の感触が変わった事が分かる。人間の世界が止まり、異界の扉が開く。
開け放している窓から不自然な強い風が吹き込み、勢い良くカーテンが左右に開く。全身から嫌な汗が噴き出し、今そこにいるモノに対し警笛を鳴らす。
来た──!!