黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
壁と天井を足跡が埋め尽くすと、窓の正面の床からトンという音がした。その方向に視線を移すと、そこに人影が浮かび上がった。
顔の右半分が白骨化し、左半分を鮮血で真っ赤に染めた少女の姿。それを認識した瞬間、全身がビリビリという感覚が貫き、身動き一つできなくなった。
金縛り。
この状況での金縛りは、冗談で済まされない。
少女はあご先から鮮血を滴らせながら、ユラユラと歩き始める。円を描く様に、部屋の中を歩く。
ユラユラ、ユラユラ。
少女の描く円は徐々に小さくなり、俺を中心に1メートル以内になった。
汗が噴き出す。
どんなに力を入れても動けない。
どんなに祈っても動かない。
心拍数が跳ね上がり、心音で頭が痛い。
目の前、30センチの場所で少女が立ち止まり、俺の足を真っ赤に染めていく。
死ぬ・・・のか──?
そんな言葉が脳裏を過ぎる。
圧倒的な力の差。
こんなモノを、どうこうできるはずがない。
身体を動かす事さえ許されず、このまま俺は殺される。
少女がゆっくりと身を屈め、俺の顔を覗き込んだ。