黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
少女は暗闇に染まる瞳で、俺を覗き込む。
1秒1秒が、永遠にも感じてマヒしていく。
声も出せず、指1本も動かせない。
ダメなのか・・・そう思った時、少女は体勢を起こし背を向けた。
──ここじゃない──
少しずつ遠ざかる背中。
ここじゃない?
今、確かにそう聞こえた。
どういう意味なんだ?
気付くと、いつの間にか金縛りが解けていた。
無意識に俺の口から、感じたままの言葉が溢れ出す。
「ここじゃないって、どういう意味なんだ?」
ハッとして我に返った時には既に遅かった。
背を向けて立ち去ろうとしていた少女が、この言葉に反応して動きを止める。そしてクルリと身体ごと振り返ると、全身から真っ赤な瘴気を噴き出す。そして目の前で全身が白骨化し、宙に舞い上がると物凄い勢いでこちらに向かって突っ込んできた!!
避ける時間などない。
少女が眼前に迫り、思わず目を閉じた!!
・・・虫の声が聞こえる。
少し離れた場所をバイクが通る。
開け放たれた窓から、真夏のジメジメとした熱風が吹き込む。
夏の夜の静寂が戻る。
目を開けると真っ赤に染まっていた窓や壁、天井が元通りになっていた。