黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
「いらっしゃい。あらあら、雅治君よね?まあ、大きくなって。何年振り?目元がおかあさんにソックリよね」
まくし立てるオバサン。かれこれ5、6年は会っていないが全く変わっていない。
「で、今日は何を持って来たの?制服?」
一通り喋った後で、ようやく仕事の話をし始めるオバサン。俺は左右にクビを振り、一歩前に足を踏み出して尋ねる。
「そこの交差点で1年前に事故があったでしょ。あの事故について聞きたいんだ。この近所の事で、オバサンが知らない事なんか無いし」
「ああ、あの事故ね」
一瞬オバサンの手が止まり、視線が虚空を泳ぐ。そして預かりものの衣服を整理しながら、思い出す様に話し始めた。
「あれは本当に痛ましい事故だったねえ。下校途中だった1年生の女の子が、車にはねられて。前方不注意だったみたいよ」
「その車を運転していたのは、この辺りの人?」
当たり前に考えれば、縛られている想い・・・怨念は、車を運転していた人に向けられる。「ここじゃない」は、運転していた人の家ではない──という事だろう。