黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
「運転していた人はね、この前の道をよく使うという会社員で、よくある話だけど急いでたんだって」
相槌を打ちながら先を促す。
「32才の男性で、奥さんと小さい子供が1人。ここから車で30分くらいの、高見ヶ丘っていう団地に住んでいるとか聞いたけど」
本当によく知ってる。と驚くと同時に、少々呆れた。しかし、オバサンがよく知っている理由を聞いて、俺は自分の考えが浅はかだったと気付く。
「オバサン何でも知ってるねー」
棒読み。棒読みにも関わらず、オバサンは話しを続ける。
「そりゃね、毎日来てれば話す機会もあるよ」
「毎・・・日?」
「今は業務上何とかで刑務所にいるみたいだけど、それまでは1日も欠かさず花を持って来てたよ。自分にも小さい子供がいるからって、みっともない位に泣き崩れてね・・・
今は奥さんが、3日に1度は花を持ってお参りに来てるよ」
──どういう事だ?
あの少女は自分を殺した運転手に対する怨みで、現世に縛られているのではないのか?
だからこそ、あの場所で運転手が来るのを待っているのではないのか?