黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

表面上は平静を保ちながら、内心はかなり動揺していた。

こうなってくると、個人的な想いに縛られているとしか考えられない。個人的な想いなど、他人である俺に分かるはずがない。


「でもねえ、家族は一度も来てないらしいよ」
「え?」
オバサンの声が小さくなる。
「あの女の子、1人で帰ってたのよ。事故が5時半でしょ。学童に預けられてたらしいんだけど、時間になっても誰も迎えに来なくて、1人で帰ってる途中に・・・」

ああ、そうか。

「聞いた話だけど、シングルマザーで最近は男に入れ込んでて・・・いやね、彼氏ができて、あの子を虐待してたって話も。まあ、噂だけどね」

怨みは相手にばかり向けられるとは限らない。
自分に会いに来ない。
迎えに来なかった。
自分を愛してくれない母親。

「その子の家って近いの?」
「え? ああ、交差点を真っ直ぐ行った所に郵便局があるでしょ。その目の前にある2階建てのアパートに、今でも住んでるはずよ。こんなに近いのにね」

なるほど・・・
状況は把握した。
後はどうやって女の子を成仏させるかだ。

 



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