黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

クリーニング屋を出た後、胸の奥がジンジンと痛み、息が苦しくなった。

善悪は別にして、悪霊にまでなった怨みが、当事者である運転手に向けられるのであれば分かる。でもそれが身内、しかも母親に向けられているとなると切なくて仕方がない。

そもそもは俺に無関係な事だ。俺の目的からすれば、こんな面倒な悪霊は無視して別の場所に行けば良いのだろう。しかし、知ってしまった以上、あの少女を呪縛から解き放ってやりたい。


俺はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、通話履歴から電話をかける。

「・・・何?」
相変わらず不機嫌そうな声だが、さすがに慣れてきた。
「ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「手短かにね。今、補習の休憩時間だから」
「補習?」
「あーもー、雅治には関係無いでしょ!!」
電話を切られそうになり、慌てて本題に入る。

「霊との接触に、時間帯とか関係ある?」
「あるよ」
「いつ?」
「・・・変な事を考えてないでしょうね?
何の知識も能力もなく霊にアプローチするのは、かなりヤバいのよ?」
瑠衣の声色が変わる。
「何もしないよ」
「ふうん、まあいいけど・・・」

「何時頃?」
「逢魔が時よ。光と闇が曖昧になる時。丑三つ時だと思っている人が多いけど、それは間違い。夕方の方が、霊は意識がハッキリしてる」

 



< 30 / 100 >

この作品をシェア

pagetop