黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

「あの子の父親はヒドいDV男で、私は怪我が絶えませんでした。それでも、時折見せる優しさのために別れる事ができなくて。そんな時、お腹にあの子がいる事が分かって・・・あの子を守るために別れる決心をしたんです」

室内を見渡すと、少女の写真が所狭しと並んでいる。生まれた時から去年までの、笑顔の写真達。

「1人になって、あの子が産まれたら2人で楽しく生きていこうと思っていました。本当に、そう思ってたのに・・・だけど産まれてきたあの子は、あの人にそっくりで──」

母親の目から大粒の涙が溢れ、テーブルの上にポタポタと落ちる。それでも目を見開いたまま、話しを続ける。

「悪夢の日々を思い出すんです。あの子には関係ないのに・・・あの頃を思い出して、そっくりなあの子を、あの子を殴った!!
殴って、蹴って、泣き叫んでも、泣き叫んでも、何度も何度も!!」

悲鳴が聞こえる。
母親になろうとしてなれなかった女性の。
後悔と懺悔の念に押し潰されそうな、あの少女の母親が・・・

良かった。
少女に会いに行って、本当に良かった。

 




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