黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
─ここじゃない─
あの少女、萌香は想いが強過ぎて悪霊になった。悪霊は地縛霊だ。ある一定の条件以外では、その場所を離れる事はできない。
萌香の例外。それは、交差点を訪れた者に憑依し、短時間限定でその者がいる場所に行く事ができる。
萌香は探していた。
自分の想いが遂げられる場所を。
「最初、萌香ちゃんは自分を轢いた運転手を怨んでいるんだと思っていました。でも、運転手、その家族も、今でもずっと花を欠かしていません。
では、誰、どこなのか?」
母親の身体がビクリと反応する。
「答えは簡単でした。なぜなら、母親が一度も現場に来ていないから」
ほんの数秒、その沈黙が空気を重くする。
そして、母親が口を開く。
「あの子は、さぞ私を怨んでいるでしょうね。それを伝えに来たんでしょ?それだけの事をしましたから、覚悟はできています」
恐怖からか悲しみからか、握り締めている母親の拳が震えている。