黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

「違和感があったんですよ」
「え・・・?」
「なぜ、萌香ちゃんはあんな表情をしているのか?」

室内の写真を見て確信した。

「萌香ちゃんは、家に帰りたかったんです。
大好きなママのもとに──」

母親はガバッと顔を上げ、真っ赤にした目を見開いたまま首を左右に振る。
「有り得ないわ!! あんなヒドい仕打ちを続け、あの事故から一度も会いに行っていないし」
「萌香ちゃんの机は残ってますか?」
「ええ、あの日のまま残してます」

母親の案内のもと、萌香が使っていた部屋の扉が開く。ピンクを基調にした可愛らさしいインテリアの数々。
でも確かに、この部屋の時間は止まっている。

「右側の、一番上の引き出しを抜いて下さい。その裏にノートが貼り付けてあるはずです」
俺の言葉に従い、母親が引き出しを抜いて持ち上げる。するとそこには、ピンクのウサギが大きく描かれた可愛いノートが、セロハンテープで無理矢理貼り付けてあった。

「萌香ちゃんの友達の間では、あるオマジナイが流行っていたそうです。自分の願いを書いたノートを、誰にも見付からないようにしておく。すると、その願いは必ず叶うと」

母親が両手でノートを持ち、じっと見詰めている。
「それを読めば、萌香ちゃんの想いが分かりますよ」

震える手で、母親がノートを開く。

 





 



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