黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

一度は止まっていた涙が、母親の頬を伝って床に落ちる。

母親は笑顔で、頷いたり、左右に首を振る。
その度に、キラキラと涙が光る。
キラキラと想いが繋がり、キラキラ光る。

今2人の想いは、確かに1つになっている。
でも、終わりの時は訪れる。


母親がこちらを向き、頭を下げる。
「ありがとうございました」
「もういいんですか?」
「はい。もう萌香を逝かせてやりたいので」
「そうですか」

別れ・・・
今度こそ、二度と会えない最後の別れ。
他人事ながら俯いてしまう。

その時、どこからともなく声が聞こえた。

─ママ大好き!!─

ハッとして顔を上げると、そこには萌香に抱き締められている母親の姿があった。
泣き笑い。
2人共、泣きながら笑っている。

やがて、萌香の足先が光の粒子に変わり、まるで初夏の蛍の様に天に昇り始めた。その光景が余りにも切なくて、胸の奥が締め付けられる様に苦しくて・・・


──ありがとう──


溢れる涙を堪えて笑顔を作った。

 



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