黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

あと2人。
あと2人成仏させれば、果歩に会える。
ペダルを踏む足に、自然と力が入る。
背中に滲む汗など気にする事もなく、人が少ない歩道をズンズン進む。20分足らずで、前方に校舎らしき建物が見えてきた。おそらく、あれは寺西中学校だろう。

寺西中学校の校門を通過し、学校の高い塀に沿って進む。すると突然コンクリートの塀が途絶え、錆びた鉄製の網に変わる。

金網の向こう側は、強引に雑草が顔を出している舗装された駐車場で、奥に薄汚れたコンクリートのビルが見える。窓ガラスは全て割られ建物内が見えるが、昼間だというのに闇に飲み込まれている。


鉄製の門によじ登り、敷地内に飛び降りる。
その瞬間、キィンという耳鳴りがして全身に鳥肌が立った。脳裏に「ヤバい」と文字が浮かび、思わず後ずさる。

だが、果歩に会う為には、このくらいの事でおめおめと引き返す訳にはいかない。

得体の知れない恐怖感を振り払い、3階建ての病院を見据えるとポケットからスマホを取り出す。2コールで相手の不機嫌な声が聞こえた。

 

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