黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
こんな廃墟に人影?
またヤンキーのたまり場になっている可能性もあるが、まだ午前中だ。それに、バイクや自動車も見当たらない。まさか、徒歩で集合するなんて健康的な人種でもないだろう。
という事は、もしかしてあれが・・・
足下の埃を巻き上げながら、奥へと続く廊下を足早に進む。エレベーターに突き当たった時には、既に外の光はほとんど届いていなかった。
当然エレベーターは動いていない。エレベーターに向かって左右に伸びる通路。その時、視界の左隅で何かが動いた。
「こっちか」
すかさず左側を見ると、黒い影が少し先にある階段の方へと消えた。俺は一心に、急いでその後を追う。
──闇。
しだいに目が慣れてきているとはいえ、数メートル程しか視界がない。どうやら階段は、地下と2階の両方に繋がっているらしい。
漆黒の地下を見下ろし、ゴクリと唾を飲み込む。いくら何でも、さすがに地下に下りて行く勇気は湧いてこない。
思案していると、階段の上からカラカラと音を立て小石が落ちてきた。ハッとして顔を上げると、2階へと続く階段の踊場に人影が見えた。
上だったという少しの安堵感を追いやり、一気に階段を駆け上がって距離を詰める。