黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
▼触れてはいけないモノ

階段を上がるに従い、徐々に空気が重くなる。今まで全く感じなかった圧迫感が、辺りに満ち溢れてくる。
「何かヤバい」
そう思い、1階と2階の中間にある踊場に立ち止まる。

1人目がたまたま上手くいっただけで、いつも何とかなるとは限らないんじゃないのか?
実際、瑠衣も運が良かった的な事を言っていた様な気がする。ここは何かヤバい。


引き返そうとした時、2階から人影が見下ろしている事に気付いた。その背後には窓が見える。日差しが2階を照らしている。

2階は明るい。
悪霊を始めとした霊は、昼間は力が弱いと相場が決まっている。それなら、明るければ多少は何とか出来るんじゃないのか?

根拠の無い自信が湧いてきた俺は、自分を鼓舞して人影に向かって走り出す。しかし、俺はすぐに自分自身の軽率な行動を後悔する事になる。


人影は逃げる様に視界から消え、俺は2階の通路に出た。左右に伸びる通路。左は正面玄関方向に向かっているらしく明るい。右は奥へと続いていて、ほんの数メートル先で真っ暗になっている。

右側を見るだけで、全身に鳥肌が立つ。
何かがいる。
先程から見かけている人影か?
違う。
もっと違う何かだ。

今すぐ引き返すべきだ。


 


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