黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
▽悪霊の見分け方
7月25日19時20分──
西市橋駅から自転車で西に5分程の場所にあるコンビニエンスストアの前で、一人の女子高生が減速せず猛スピードで右折してきたトラックにはねられた。
すぐに救急車で病院に運ばれたが、全身を強く打っていて既に息が絶えていた。彼女の名前は稲森 果穂。まだ付き合って1週間しか経たない俺の彼女だ。
中学2年生の時に同じクラスになり、その時からずっと好きだった。肩より20センチ程長い髪をポニーテール風に束ね、常に明るく活発な果穂は誰からも好かれるクラスの中心的な存在だった。
その他大勢でしかない俺は、当然の様に声を掛ける事もできず、左右に揺れるポニーテールを追うことしかできなかった。それでも、稀に目が合う奇跡があり、そんな日は1日中ニヤけていた。
しかし、そんな日々は3年生の時に行われたクラス替えで、あっけなく終わりを迎えた。果穂は3組、俺は4組。
それでも、休み時間になれば必ず3組にいる友達の所に顔を出し、遠くにいる果穂を見ていた。
「お前、マジでストーカーじゃん」とツッコまれても、果穂を眺めていたかった。