黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
▼漆黒の悪霊
「う・・・うわああああ──!!」
叫びながら、反射的に俺は扉の中に飛び込む。
黒くのし掛かる濃密な空気。
何も無い長方形の空間。
締め切られたカーテンの隙間から、僅かに光が差し込む。
何かを引きずる音。
右腕を掴まれた瑠衣が、部屋の奥へズルズルと引き込まれていこうとしていた。
廊下で遭遇したゾンビらしきモノが3体。その奥の暗闇に沈む漆黒の何か。それを認識した瞬間、キリキリと頭痛がし始め、意味もなく吐き気を覚えた。
視界が歪み、めまいがする。
不意に思い出す言葉。
「黒い悪霊に遭遇したら、生死に関わる・・・か」
言葉を飲み込み、震える膝に力を込める。
「瑠衣!!」
無抵抗に引きずられていく瑠衣に怒鳴る。
「瑠衣!!お前、何を納得した顔してるんだ!!自分のせいだとか勝手に思ってんじゃねえよ!!」
「だって・・・」
涙でグシャグシャになった顔を僅かに上げ、かすれた声で応える。
「私が・・・私が呼びにさえ行かなきゃ・・・」
「んな訳ねえだろ!!」
瑠衣の言葉を遮る様に叫ぶ。
「自業自得だ。そいつが悪いんだ!!
瑠衣のせいじゃない。そいつが悪い!!」
瑠衣の向こう側にいた2体が、俺めがけて動き出す。