黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
悪霊をどうやって見分けるんだ?
心霊現象などに興味がなかった俺に、霊に関する知識など無い。ただ、良い霊と悪い霊がいる的なことは聞いたことがある。悪霊と言われるものは、名前からしても悪い霊だろう。
しかし、あそこに見える人影が霊として、あそこに見える人影も霊だとして・・・どれも同じにしか見えない。
石段の最上部に座って頭を抱え込んでいるうちに、徐々に空が色を持ち始めてきた。
街が動き始める。新聞配達のバイクが下の道を走り抜け、東の空がオレンジ色を帯びてくる。
ここに座っていても仕方がない。
とりあえず、街を歩いてみよう。
着の身着のままの、黒いジャージに無地の白いTシャツ姿という適当な服装を気にすることなどなく、俺は階段を下りて市橋駅方面に向かって歩き始めた。
裏通りの古い商店街を通り掛かると、八百屋の前に白い人影が座っていた。この八百屋は、店主が病気で入院していると耳にした事がある。
通り過ぎる時にソッと顔を覗き込み、見知った顔に息が止まる。この太い眉毛は、間違いなく八百屋のオッサンだ。
もしかして、死んだのか?
そんな思いが脳裏を過ぎる。ブンブンと頭を左右に振り、足早に八百屋の前を離れた。