黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

不意に巫女装束の少女が後方に跳ねる。
同時に、直線まで立っていた場所に人間の頭ほどのコンクリート片が降り、破砕音を撒き散らす。

「コロス」

ユラユラと悪霊が近付いて来る。
絶望が襲ってくる。

「シネ・・・ミンナシネ」

闇が暗さを増し、肺が怨念に埋め尽くされて息が苦しくなる。
逃げなければ殺される。頭では分かっているのに、全身が凍り付いているかの様に動かない。

「コロス」

声が徐々に近くなる。
鼻の奥が刺激臭でマヒしてくる。何日も放置されていた生ゴミの様な悪臭。これが死臭でなくして一体何だろうか。

「うごああああ!!」
悪霊の咆哮。突如、俺達の方に猛然と突っ込んで来る。
成す術も無く、瑠衣を抱き締める様に庇う俺の腕を、巫女装束の少女が異常な力で引っ張る。俺は瑠衣もろとも、転がってその場を離れた。ギリギリのタイミングで、悪霊は背後の壁に大穴を開ける。


死ぬ・・・のか?

どうする事も出来ない。
汗が冷え切り、肌寒くすら感じてくる。
逃げられそうにはない。
助けも来ない。
せめて、瑠衣だけでも・・・





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